Accsoonブースで目立っていたのは、ワイヤレス映像伝送だけにとどまらない製品展開だ。今回のBIRTVでは、4K映像伝送システム、撮影用モニター、ワイヤレスインターカムを大きな柱として展示。映像の伝送からモニタリング、カメラコントロール、ライブ配信、さらにスタッフ間のコミュニケーションまで、撮影現場のワークフローを幅広くカバーするラインアップを披露していた。

なかでも目を引いたのが、送信機、受信機、モニターなど複数の役割を1台にまとめた「CineView M7 Pro」だ。今回のAccsoonブースを象徴するような多機能モデルで、映像伝送を軸に撮影現場全体のワークフローへと製品領域を広げていることがうかがえた。

最大9人で使用可能なワイヤレスインターカム「CoMo II」

ブースで紹介されたワイヤレスインターカムが「Accsoon CoMo II」だ。映画撮影やライブプロダクション、イベントなどにおけるスタッフ間のコミュニケーションを想定した1.9GHz帯のフルデュプレックス・ワイヤレスインターカムシステムで、別途ベースステーションを必要としないのが特徴となる。

1台のマスターヘッドセットがシステムのハブとなり、最大8台のリモートヘッドセットを接続可能。マスターを含めて最大9人で同時に使用できる。最大通信距離は見通し環境で400m。

会場担当者によれば、マスターヘッドセットは約10時間、リモートヘッドセットは最大17時間の動作に対応するという。長時間にわたる映画撮影やイベントでも、バッテリー交換の頻度を抑えられる点はメリットとなりそうだ。

CoMo IIは3.5mm端子も備えており、ユーザー自身のヘッドフォンを接続して使用可能。マイクを上げるだけでミュートできるFlip-to-Mute機能や、デュアルマイクENCとAIノイズリダクションも搭載する。ヘッドセットはバッテリーとイヤーパッドを含め約170gに抑えられている。

さらに会場では、将来的に最大16ユーザーまで接続可能なハブを追加する構想についても説明があった。現行の最大9人から、より大規模な映画・ライブ制作チームへ対応できるシステムへの拡張も視野に入れているようだ。

UHD 4K60対応の映像伝送システム「CineView Master 4K」

ワイヤレス映像伝送では、フラッグシップモデル「CineView Master 4K」を展示していた。

CineView M7 Proの後方に設置されているのが「CineView Master 4K」

CineView Master 4Kは、HDMI経由で最大UHD 4K/60fps(3840×2160)のエンドツーエンド映像伝送に対応するワイヤレスシステム。2.4GHz、5GHz、6GHzを利用するトライバンド伝送技術と、Accsoon独自のRTMS 4.0プロトコルを採用する。最大伝送距離は見通し環境で2.5kmとなる。

遅延は1080p/60fps時で25ms未満、4K/60fps時で35ms未満。HDMIでは4K/60fpsの入力、伝送、出力に対応し、SDIも備える。送信機1台から複数のデバイスへ映像を送り、カメラマン、ディレクター、フォーカスプラーなどがそれぞれ映像を確認するワークフローを構築できる。

Accsoonは以前からスマートフォンやタブレットを撮影用モニターとして活用する製品を積極的に展開してきたが、CineView Master 4Kではその技術をプロフェッショナルな4K映像伝送へと拡張している。

送受信、録画、カメラコントロールまで担う「CineView M7 Pro」

ここから詳しく見ていきたいのが、7インチモニター「CineView M7 Pro」だ。

CineView M7 Proは、単なる撮影用モニターではない。モニター、ワイヤレス映像送信機(TX)、受信機(RX)を1台に統合し、本体からそれぞれのモードを切り替えて使用できる「All-in-One」のスマートモニターとなっている。

Accsoon CineView M7 ProをRX(受信機)として使用している際の「RX入力情報」画面。CineView SE 4KからFHD映像をワイヤレス受信している状態を確認できる

7インチ、1920×1080ピクセルの液晶を搭載し、輝度は1000nits。HDMI 2.0と3G-SDIの入出力を備え、HDMIでは最大DCI 4K/60fps、SDIでは最大1080p/60fpsに対応する。SDIとHDMI間の信号変換にも対応しており、撮影現場のコンバーターとして使用できる点も特徴だ。

モニタリング機能としては、LUT、フォルスカラー、波形表示、フォーカスピーキングなどを搭載。映像の確認だけではなく、録画や再生にも対応するなど、撮影現場のポータブルワークステーションを意識した設計となっている。

CineView M7 Proで注目したいのが、カメラコントロール機能だ。

対応カメラと接続すると、モニター上からシャッタースピード、絞り、ISO、ホワイトバランスなどを変更できる。さらに画面をタッチしてフォーカスポイントを移動するタッチフォーカスや、カメラとモニターの同期録画にも対応する。

会場デモでも実際にカメラを接続し、モニターからシャッタースピード、ISO、絞り、ホワイトバランスを変更する様子を確認できた。

Accsoonでは、ソニーFX3、FX30、α7 IV、α9 IIIなどに加え、キヤノンEOS R5/R6シリーズ、ニコンZ8/Z9など複数の対応機種を案内しており、今後も対応カメラを追加する予定だ。

これまで外部モニターとカメラは基本的に「映像を見るための関係」だったが、CineView M7 Proではモニター側から撮影パラメーターまで操作できる。ジンバルやリグに組み込んだカメラなど、本体に直接触れにくい撮影環境でも有効な機能となりそうだ。

会場担当者によれば、CineView M7 ProはAndroidベースのシステムを搭載し、インターネット接続やAndroidアプリの利用にも対応する。

ライブストリーミングにも対応し、SRTやRTMPによる配信が可能だ。

CineView M7 Proのライブ配信設定画面。配信先URLとストリームキーを入力でき、Facebook、Douyin、Bilibili、カスタム設定などの配信先を選択できる

外部PCやキャプチャーデバイスを追加することなく、モニターを撮影・配信ワークフローの中心として使うことができる。SDカードへの録画に加え、USB-C経由で外部ストレージを利用できる。

RX(受信)モードで映像をモニタリングしながら、録画関連の操作を表示している様子
SDカードへの直接録画に加え、USB-C経由で外部ストレージを接続し、録画やファイルのインポート/オフロードを行える

映像を見るためだけだったフィールドモニターに、送受信、録画、カメラコントロール、映像変換、ネットワーク、ライブ配信といった機能を集約したCineView M7 Pro。機材点数を減らしたい小規模な撮影チームから、多数のモニタリング環境を構築する現場まで、さまざまな使い方が考えられる。

映像伝送から現場コミュニケーションまで広げるAccsoon

今回のAccsoonブースを見て印象的だったのは、それぞれの製品が単独で完結するのではなく、撮影現場全体のワークフローを意識して設計されていることだ。

4K映像を長距離伝送するCineView Master 4K、モニターとTX/RX、録画、カメラコントロールを融合したCineView M7 Pro、そして最大9人のスタッフをつなぐCoMo II。従来から得意としてきた映像伝送を軸にしながら、Accsoonの製品領域はモニタリング、カメラ操作、配信、スタッフ間コミュニケーションへと着実に広がっている。

特にCineView M7 Proのように、従来は複数の機器が担っていた役割を1台へ集約する方向性は興味深い。撮影機材が高機能化する一方で、現場ではセットアップの簡素化も重要になっている。今回のBIRTVにおけるAccsoonの展示は、高機能化とセットアップの簡素化を両立しようとする同社の現在地を示すものとなっていた。

ブースでは今後の新製品・新機能を示唆する展示も行われていた。「COMING SOON」とともに掲げられた中国語の「多发多收」は、「複数送信・複数受信」を意味する。看板には複数の映像を同時表示する画面イメージも描かれており、マルチTX/マルチRX構成や、複数カメラの映像を1台のモニターで確認するマルチビュー機能を予告する展示とみられる