DZOFilmCattaZooメイン写真

■価格
Catta Zoom 35-80mm T2.9:税込396,990円
Catta Zoom 70-135mm T2.9:税込396,990円
Catta Zoom 35-80mm T2.9 & 70-135mm T2.9セット(専用ケース付属):税込735,790円
■国内発売日
2021年12月24日
■問い合わせ先
システムファイブ

クイックリリース式の交換マウントを採用

DZOFILM社のレンズレビューは、「Pictor Zoom」から始まり、「Vespid」をテストしてきた。今回は「CATTA ZOOM」である。Pictor Zoomを実際に購入し使用していた身とすれば、DZOFILMとはマッチングが良いのかもしれない。

DZOFilmCattaZoo説明写真
左はCatta Zoom 70-135mm T2.9、右はCatta Zoom 35-80mm T2.9

このCATTA ZOOMの出荷時マウントは、Eマウント(ソニー)が基本である。しかし自分のメイン機はRED KOMODOであり、RFマウントでなければ付けられない。しかもEマウント(レンズ側)からRFマウント(カメラ側)に変換するアダプタは自分の記憶では見つかっていない。Eマウントはフランジバックの問題で他のマウントに載せ替えることが厳しいのである。相当探したが見つからなかったし、今でもたまに検索しているがなかなか出てこないので、読者の皆さんで知っている方がいらっしゃれば教えていただきたいくらいだ…。

その中、CATTA ZOOMはマウントが自分で簡単に交換できるシステムを開発したらしく、オフィシャルページで情報を取ってみたら、確かにできる。しかもオプションで他マウントが用意されているようなので、これはもしかしたら!と思って確認すると、編集部から「今回はEマウントでお願いします」と。仕方ないと諦め、ちょうどα7 IVが来たばかりだったので、それでも良いかと思っていた。そう思いながらクッションを避けていくと、レンズの箱とは別に小さい箱が2個入っている。

お!もしかしたら…、と手に取ってみると、画面上で見た他マウントではないか。しかも同梱されていたのがEFマウントではなくRFマウントだったので、この歳で「やったー!」と声が出てしまった。

2021年にいくつか書いたレビューは、KOMODOに合うお手頃レンズの探索だったので、どうしてもKOMODOで使えるものが自分の中では基本の基になっている。なのでEマウントで送られてくると思っていた落差が声に出てしまった…。

少し高まったところで早速マウント交換を行おうとしたら、写真のようにマウント間際にあるボタンと、LOOSE・TIGHTと書いてあるダイヤルが関係あるのだろうと推測はしたのだがうまく行かない。LOOSE・TIGHTダイヤルを回してボタンを押してもマウントが外れない。しかし、LOOSE側にダイヤルを回してボタンを押した時に何の拍子かマウントも回ってしまったら、いとも簡単に外れてしまった。自分の悶絶は何だったのだろう…。

DZOFilmCattaZoo説明写真

Pictor Zoomと同じようにSIMの重ねが確認できる。マウント交換は業者に頼んで行うのが普通なので、あまりSIMを見ることはないと思うが、レンズの構造を確認できる一端でもある。またPictor Zoomのマウント交換はネジ式で手間も掛かったが、これは画期的な仕組みだ。やり方を覚えてしまったら、現場でも直ぐに交換ができる。

特にドキュメンタリー系の者には嬉しいだろう。スチルを兼ねて一眼を持って歩く選択が増えるのだから。いざとなったら2ndや3rdカメラとして一眼が使えるし、写真も撮れるし。マウントの付け方は付けるマウントを溝に従ってはめ、ボタンを押しながら回転させ仮固定し、LOOSE・TIGHTダイヤルをTIGHT側に回し切ると終わり。

強度問題までは今回のテストでは測り切れないが、心配の方々はレンズサポートを使えば良いと思う。重さからして使う使わないのギリギリのような気もするが…。とにかくこれは素晴らしい機能であることだけは間違いない。

DZOFilmCattaZoo説明写真

ドロップイン方式のリアフィルターを採用

また機能面になるが、ドロップインフィルターのスロットが用意されている。これも評価が高い。KOMODOはEFレンズを装着する時にはキヤノンのマウント変換アダプターをかませるわけだが、今はKOMODOに同梱されているものではなく、キヤノンの「ドロップインフィルターマウントアダプターEF-EOS Rドロップイン可変式NDフィルターA付」の方を使っている。

理由はズバリ、NDフィルタやPLフィルタがスロットに差し込むだけで使えるからだ。この取り回しの良さは一度使ってしまうと前玉方向に取り付けるタイプはしんどくなる。ただDZOFILMからはまだフィルタ自体が発売されていないようなので、将来展開への布石を打っているのだろう。将来性からも良い試みだと思う。ちなみにND/UV/ストリーク/ミストフィルターが用意されるとアナウンスされている。

DZOFilmCattaZoo説明写真
リア側にプラグインフィルターを搭載
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ユーザーがND/UV/ストリーク/ミストフィルターを自由に変更可能

フロントフィルターサイズは77mmで小型軽量を実現

CATTA ZOOMは細身の径が手にフィットし、実際に装着した感じは明らかにPictor Zoomよりコンパクトである。そしてふと思ったのがFUJINON MKシリーズを意識したのではないかと。T値が2.9という点も同じで、細身のロングボディのズームレンズという見た目も近いと思う。ただCATTA ZOOMはフィルター径が77mmで、FUJINON MKシリーズ82mmなので意外にもMKシリーズの方が太いようだ。また77mmだと今使っている一眼系のレンズのフィルターがそのまま使える。メーカーが意識してそうしたのかはわからないが、良い線をついてきたなぁ、と思った。前にも書いたが、やはり自分お手持ちパーツ使えるというのは助かることだ。

ただズームダイヤルの渋さが気になった。フォーカス、アイリスのダイヤルには感じない重さがあり、微かな擦れ音が出ている感じでもある。カメラの内蔵マイクを使わなければ良い問題でもあるが、改良されることを希望する。

またもう一点気になったことは、ズームを行なっている時に中間でいったんフォーカスが膨らみ少しボケるが、終わりできちんとピンが合うと言う現象だ。単なる特性だとは思うのだが、執筆している時点でも理由はわからない。

DZOFilmCattaZoo説明写真

このシリーズは35-80mm T2.9と70-135mm T2.9が用意されている。両方を持てれば35mm~135mmをカバーできることになるのだが、欲を言えば70~80mmが被っているので、広角側が24-70mmだったらもっと使い勝手がいいだろう。スーパー35だと1.6倍くらいの画角になってしまうので、シネマレンズの立て付けであれば、主流センサー(スーパー35)に合わせた仕様をお願いしたいものだ。

落ち着いた画作りのテイストを実現

では肝心な映りに移ろう。マウントが交換できたので、35-80mm T2.9をKOMODO、70-135mm T2.9をα7 IVに装着してテストした。このレンズの売りで、「ナチュラル・オリジナル・リアル」という3本柱を設計思想として開発したそうだ。確かに派手に突き抜けてくる色の出方はしないが、しっくりと落ち着きどころをわかっているかのテイストと思う。

こう書くと淡い感じの色なのかというとそうでもなく、葉の色など出なくてはいけないところはきちんと出て、ハイキーな方向では落としてくる感じなので、グレーディングを考えるとまとめやすいと思う。またシャープさもありながらも、ギラギラはしない。当然、パキパキでもなくギラギラでもないので、映画の落ち着き感も自然と出てくる。当たり前のことかもしれないが、スチール系から生まれたモノではなく、最初から映画に特化して設計しているのが画作りに出てくるのであろう。

カメラ本体の性質も影響するので、その辺も踏まえながらになる。本体の比較からはやはりと言うべき結果が。写真をベースとしたα7 IVはディテールがよりハッキリと映り、パキッとした画を好む人にはズバリだと思う。LUTはS-Log3(709)を当てて自分ではグレーディングしない状態だが、グリーン色はかなり鮮明に出ている。オレンジ系がややサッパリしているが好みの範疇ではないだろうか。

α7 IV+70-135mm T2.9の例

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一方KOMODOの方は輪郭の柔らかさが映画の雰囲気を増幅させ、落ち着いた画作りなった。こちらもREDの709用LUTを当てただけだが、より発色が鮮やかに出てきた。面白いのはオレンジ系が鮮やかに出て、グリーン系が落ち着くと言う結果に。

カメラとLUTのアレンジに依存するが、この2台で構成を組む時にはカラーコレクションはちゃんとやらないといけないだろう。その辺が面倒なのでKOMODOでの2カメになってしまうのだが…。

KOMODOと35-80mm T2.9の例

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このレンズで良いと思ったところは、ボケ玉の出方だ。ほぼ丸に近い形で優しい見え方だ。ボケ玉ほどレンズによって変わるので、ボケを好んで撮られる方は玉の出方も気にしながら選んだ方がいいと思う。この玉の形で雰囲気がかなり変わるので、可能であれば実機確認するか、もしくはアップされている動画などで確認されたい。ちなみにメインで使っているキヤノンRF24-105mm F4 Lは絞り羽根枚数9枚だが、CATTA ZOOMは16枚だ。より円に近い形で光を通すことになり、それもこだわりだろうと想像する。

ただこのレンズを使う時には十分に光を入れるセッティングで撮った方がいい。光の取り込みが少ないと輪郭の甘さが出てしまうかもしれない。Vespidで経験したことだが、最近の流行りで露出をアンダー気味にして白飛びさせないギリギリまで攻めてしまうと、その現象が出てくる。逆にノイズが出ない程度までISO感度も上げ、十分に光を取り込んでいけば期待通りの画が撮れる。

マウント交換の容易さとドロップインフィルターのスロットがポイント

総じてこのレンズは有りか無しかと聞かれれば、有りだと思う。まずは映画を意識して作り込まれている点。そしてコストパフォーマンスを高めながらこだわるという相反する思想も好感度が高い。そして長さはあるが、コンパクトになったこともポイントだし、何より紹介したマウント交換が容易にできる、さらにはドロップインフィルターのスロットが用意され拡張性が非常にコンビニエンスに高められるところだ。

スチル系のカメラはメーカーごとにマウント形状が異なり、レンズの使い回しが困難になっているので、カメラごとにレンズを用意しなくてはならない。お財布と腕力を必要とし、これほど無駄に思えることはない。それぞれのメーカーの戦略とは言え、ユーザーからすればありがた迷惑であり、前にも書いたと思うが、マウントの共通化はお願いしたい。シネマカメラに関してはPLマウントが存在するが、それを一眼系に取りつけるのはまた困難である。

それを解決する提案はレンズメーカーだからこそできたのだろうし、その姿勢は先の開発にも期待が持てるし、やはりユーザービリティを意識しているメーカーは信頼に足る存在だと思う。また機能性だけではなく、発色や画の落ち着き具合も悪くなく、それらを考えれば非常にコストパフォーマンスが良いとも思うので、一度実機を確認しながら検討されるのも良いと思う。FUJINONに比べたら明らかにコスパは良いだろう。

松本和巳(mkdsgn/大雪映像社)|プロフィール

東京と北海道旭川市をベースに、社会派映画、ドキュメンタリー映画を中心とした映画制作を行っている。監督から撮影まで行い、ワンオペレーションでの可能性も追求している。2021年8月に長崎の原爆被爆者の証言ドキュメンタリー映画を劇場公開。2022年4月8日から子どもの居場所を取り上げた「旅のはじまり」がシネ•リーブル池袋をはじめテアトル系で公開される。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。