小型サイネージがもたらす効果
写真のプリントショップチェーンであるプラザクリエイト系のパレットプラザや55ステーションなどで、10月からレジ付近で小型のデジタルサイネージの導入を開始した。これがなかなか面白い工夫によって実現されているので紹介してみたい。
プラザクリエイトでは、10月から「楽天スーパーポイント」に対応するため、新しい多機能タブレットPOSを導入した。この新しいPOSシステムは、専用の什器で覆われているが、タブレットPCで構成されている。店側ではこれまでように、レジにバーコードリーダーが繋がり、レシート用の小型プリンターが接続されるという構成で、ごくごく普通なものだ。しかし、今回の新システムでは、お客様側に向けてもう1台の小型ディスプレイが追加され、これを販促情報などのデジタルサイネージ用途として機能させている。
実はこのサイネージ画面は、POS用のタブレットPCから、USB経由で接続された「機能拡張ドッキングステーション」を経由して表示されているのだ。つまり、デュアルディスプレイシステムなのである。サイネージ用に別のシステムを構築するのではなく、POS用のタブレットPCの画面を拡張しているだけなので、1つのシステムでPOSレジ端末とデジタルサイネージを同時に実現させているのである。
レジ付近に小型のデジタルサイネージを設置すれば、会計を済ませる間のほんの僅かな時間も、有効に顧客にさまざまな情報を伝えられる。例えば小規模な店舗の場合、特に飲食店以外では、レジは出入り口付近ではなく、店内の中心部にあることも多く、買い物中にも目につく場所にあるので、情報提供場所として案外有効な場所である。
こうした需要は目立たないがかなり明確に存在していて、これに対応できる適切なハードウェアやシステムがあまり存在しておらず、結果的には多くの場合にデジタルフォトフレームがこれに使われてきた。しかし、デジタルフォトフレームは安価であるがコンテンツ表現力には乏しく、フルHDの動画は再生できないケースも多い。あるいは再生できるものは高価であった。
その隙間に需要あり
今回の事例のシステムは、エスキュービズム・テクノロジーが構築販売したもので、ドッキングステーション部分はターガス社製「ACP70APZ」を利用している。内部のエンジン部分はDisplayLink社とのことなので信頼のおけるものだ。このドッキングステーションはWindowsまたはMacのUSB3.0端子に接続するだけでDVI×1、HDMI×1(どちらも最大解像度は2048×1152)、USB3.0×2、USB2.0×4、ギガビットイーサーネット×1、オーディオ入力、出力を同時に得ることができる。
ターガスの機能拡張ドッキングステーション「ACP70APZ」
こうした機器は、一般的にはノートパソコンに接続して、デュアルまたはトリプルディスプレイ環境にする使い方だと思うが、既存の何らかのシステムの画面を拡張することで、デジタルサイネージを実現するというアプローチは非常にユニークで、確かにあると思う。特に小規模店舗の場合。最近はタブレットを利用したPOSレジ端末が急速に利用を伸ばしている。それらにもこうしたドッキングステーションを接続することで、ソフトウェアだけでデジタルサイネージが実現できる。オフィスや工場などの事業所内での情報共有のための、オフィスサイネージとあわせて、こういった市場はかなり大きいはずである。