CESでもデジタルサイネージの展示を行う企業が毎年ある。ここ最近ではパナソニックが非常に積極的であり、今年はシャープもサイネージ用の新しいディスプレイを複数展示をしてきた。これらはどれも興味深いので、今回はこの2社のCESでのサイネージに関する展示内容を紹介をしたい。

積極的にサイネージに取り組む | Panasonic

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パナソニックでのプレスカンファレンスではデジタルサイネージに関してかなり時間を割いて説明を行った

パナソニックはデジタルサイネージに積極的に取り組む姿勢であることを、昨年に続いてプレスカンファレンスで10枚ものスライドを使って解説していた。デジタルサイネージを、B2B領域での重要ビジネスと位置づけているからだ。これは単に映像表示システムという位置づけではなく、同社の持つB2B領域でのさまざまな技術や製品を、家庭以外の場所で複合的に組み合わせてビジネス展開をしていくものである。

ここ数年のパナソニックのデジタルサイネージの展示をグローバルで見ると、1月のCESで最初にコンセプト提案的な展示を行う。それはコンシューマー市場も含めた話題性のある展示である。2月のDSE(Digital Signage EXPO ラスベガスで開催)では、どちらかと言うとサイネージ業界関係者向けの製品展示に絞り込んでいる。ゆえにコンセプト提案はほとんど無い。そして6月に幕張メッセで開催されるデジタルサイネージジャパンでは、CESで展示したもののうち評判の良かったものを持ち込んできているようだ。そして9月のIFA(ベルリンで開催)ではサイネージの展示は行っていない。

今回のCESでのパナソニックブースは、正面入口に水槽と、滝のように落下する水が用意されていた。水槽には魚が、滝には文字や滝を登る魚がプロジェクションされる。どちらも超短焦点のプロジェクターを使用していた。これが世界最短の焦点距離なのだが、展示演出としてはこれらはわかりにくく、水槽は覗き込まないと何をやっているのかわからず、覗きこんでも魚が映っているだけで、少々企画倒れだったかもしれない。

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ウォータープロジェクションマッピング?

ブース中央には、LEDディスプレイによる巨大なサイネージのモニュメントがそびえ立つ。さほど高精細ではないが、サイズが非常に大きい。この表示は他の壁面のディスプレイやプロジェクターと連動していて、ブース空間全体の演出の要となっていた。

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LEDディスプレイによる巨大なサイネージのモニュメント

パナソニックブースにはもちろんVIERAなどのテレビや、LUMIXのようなカメラも展示されている。しかし、ブース全体でこれらAV機器や白物家電が展示される部分は面積にして2割くらいしか無く、残りは全てB2B領域に向けられている。この傾向も数年前から変わっていない。

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顧客が商品を持ち上げると、センサーが検知して商品棚中央のタブレットからプロモーション映像が流れる

リテールのエリアでは、商品棚のプライスタグに電子ペーパーを利用し、プライスカードが遠隔で表示を可変できたり、顧客が商品を取り上げると、センサーが検知して商品説明の映像をタブレットに表示するデモを行っていた。

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電子ペーパーによるプライスカード

またレストランの設定シーンでは、予約していた顧客がやってくると、ピンスポット型のプロジェクターでウェルカムメッセージがテキストで表示され、シェフからのビデオメッセージも表示される。

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ウェルカムメッセージがテキスト(写真左)とビデオ(写真右)で表示される

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ウェルカムメッセージが動いて、そのまま顧客をテーブルまで誘導する

顧客が店内に進むと、人の動きに合わせて、先ほどのプロジェクターが追従していく。追従というよりは人の前を行くので水先案内だ。テープルに付くと、ウェイターがメニューの説明をする。

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自分の前をプロジェクターの映像が先導してくれる

メニューは従来の普通の紙のものだが、画像認識によって説明している料理がテーブルの上に皿に乗った状態で表示される。指先を検知して、どの料理の説明をしているか判断しているようだ。レストランでの同様のサイネージ事例は、5年ほど前に筆者はロンドンの「inamo」というレストランで体験したことがあるが、今回のパナソニックの展示は、それよりもはるかに洗練されていたと思う。

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天井に設置された360度カメラ

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360度カメラからの情報に基づき投影位置を可変できるピンスポット型のプロジェクター

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メニューの説明に合わせてテーブル上に料理が投影される

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デモではワインの産地の風景も表示されていた

ロンドンのデジタルサイネージレストラン「inamo」

他には、ドライブスルーの注文時にメニューがサイネージになっているのだが、ここでの訴求ポイントは映像ではなく音声だ。ロードサイド型のドライブスルーでは、周辺の騒音で顧客の注文が聞こえにくかったりするケースがかなりあるようで、そこを同社の持つノイズキャンセリング技術で解決しようという話である。

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ドライブスルーでの注文ではキャンセリングマイクを組み込み

サイネージだけの視点では、運転席から座ったままで操作しやすいタッチパネルとか、スマートフォンで注文とか考えそうなところであるが、確かにどう考えても口頭での注文が一番楽である。そのための技術をパナソニックはしっかり持っているということで、この辺りがB2Bシフトしていく理由であろう。

また、4Kサイネージの例として、ホテルでの応用例があった。ホテルの場合では周辺の観光ポイントやレストランの情報を表示や検索をするといった場合を想定している。これまでのこうした案内サイネージは、検索結果をマップ上に静止画で表示するものだったが、今回の4Kサイネージ案内は、85インチのタッチパネルディスプレイに、HTML5ベースのブラウザーでHDの動画を、同時に複数表示させることが可能である。

例えば現場のライブカメラからのHD映像で、複数箇所の混雑状況がリアリタイムで把握できるというわけだ。これらもやはり映像やインターネット関連の複数技術の集合体であり、オリンピックに向けたニーズも明確に見越した上での展示であると思われる。

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85インチ4Kタッチパネルディスプレイでホテル周辺の案内を提供する

他には非常に透明度の高いプロジェクター用のスクリーンや、すでに発表済みの高速可視光通信による光IDソリューションも展示された。

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極めて透明度が高く、かつ明るく投影できるプロジェクター用のシートを参考展示

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非常に透明度が高い

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高速可視光通信のデモ

デジタルサイネージ用に新しいディスプレイの複数展示  | SHARP

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円形ディスプレイは150までカバー

シャープも今年はCESにデジタルサイネージ用の新しいディスプレイの複数展示を行った。まず目を惹いたのは60インチで曲率は半径500ミリ、150度までという円形に近い形状になるLCDだ。こうした円形のディスプレイは、これまでにもLEDベースの低解像度のものはあったが、今回の解像度はHDである。画質は特に問題ないのだが、こうしたケースでの課題はコンテンツになってくる。

デモでは水槽の中の魚に見立てた映像が表示されていたが、本来であれば撮影時から360度撮影をするべきだ。実際にはこうした円形映像に、どの位置から見てもリアルさを求めるケースはサイネージではあまりないだろうから杞憂かもしれない。実際の円形ディスプレイは、それにも勝るインパクトが円形にはある。設置のバリエーションとしてこうした円柱も対象になっていくことは、サイネージの広がりにつながるだろう。更に大きなサイズにも期待したいところだ。

また大画面ディスプレイでは、世界最大の120インチの業務用4K LCDが技術参考出展されていた。120インチクラスのサイズでは8Kが欲しくなるところだが、まずはこの辺りのクラスもオリンピックに向けてニーズが増大していくものと思われる。他には105インチの5Kで21:9のLCDも展示された。

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世界最大120インチの業務用4Kディスプレイ

シャープの展示はデジタルサイネージのソリューションやコンセプト提案ではなく、新しいディスプレイそのものだ。どれもさすがシャープと言えるべき製品であるが、デジタルサイネージの利用シーンは更に加速していくと考えられるので、自社技術を活用したデジタルサイネージの利用の提案にも期待したい。

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スペック

最後にご紹介するのは、サムスンのタブレットを512台使ったマルチ画面サイネージだ。微妙に同期が取れていないのだが、ここまでやればそんなことは関係なく、まさに圧巻であった。

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タブレット512台で構成された大画面マルチディスプレイサイネージ。同期のズレは気にしない?

WRITER PROFILE

江口靖二

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。