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恒例の技術公開、今年も開催”究極のテレビへ、カウントダウン!”
今年のNHK技研公開は8Kスーパーハイビジョンの試験放送を来年に控えているということもあり、”究極のテレビへ、カウントダウン!”をテーマに東京世田谷区砧のNHK放送技術研究所において5月28日から31日まで開催されている。会場は1階と地下がメインとなっているが、8Kスーパーハイビジョンの試験放送が間近に迫っていることから全26項目の展示のうちその大半が8Kスーパーハイビジョン関連となっており、1階のフロアが埋まっている。
すでに8Kのカメラやレコーダー、ディスプレイなど収録や制作、視聴に必要な個々の機材は毎年出展されており、ロンドンオリンピックやFIFAワールドカップなどで使われている。番組を制作する主要な機材がひと通り揃い、放送するための圧縮や伝送方式などもARIBやSMPTE、ITU-Rなどで規格化が進んでおり、伝送実験なども行われてきている。今年のNHK技研公開ではそうした機材を実践投入するための最終調整の段階といえ、渋谷のNHKからの映像を技研の会場で受信するデモを行っていた。
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例年とはちょっと趣の異なる入り口。現在(2015年)から未来に向けてのタイムトンネルの入り口といった趣向
今までも同様な試験は行っていたが今年は放送衛星(BS17チャンネル)を使っており、8K 22.2ch音声の伝送など家庭で8K放送を受信するまでの道筋も完成したといえる。
来年からスタートする試験放送に向けて本格的に番組制作も行う必要も出てくるが、実際の制作現場にあった運用性など、今後は現場サイドにたった機器開発の段階になり、今回の機材がそのベースになっていく。おそらく年内にスイッチャー、来年には8K中継車が出てきて全国各地様々な番組が制作されることだろう。それでは今回のメインといえる8Kスーパーハイビジョン関連が展示されている1階から見ていこう。究極のテレビへ、カウントダウン!
8Kスーパーハイビジョン関連製品が目白押し!
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エントランス入り口に設置されていた145インチディスプレイ。これはすでに出展物ではないが、その横にあるロードマップが8Kに対する技研の意気込みを感じさせる。これは、技研展のポスターやパンフレットの表紙にも見られ、8K放送に向けての自信の現れでもあるようだ。
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技研正門前には8K放送の受信アンテナが設置されていた。以前は通信衛星を使っていたので大きなアンテナだったが、今年はBSの放送衛星を使っているので、一般家庭に設置されているアンテナと同等のものとなっている。
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展示項目1番のコーナーは制作機器、8K符号化、8K衛星伝送、8Kケーブルテレビ伝送など7つに分かれており、1階の大半のスペースを使っている。
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8K衛星放送実験システム構成図。単にBS衛星に映像を送ってそれを受信しているだけでなく、お台場に設置したカメラ映像を渋谷のNHKを経由して技研に、技研でもカメラがありレコーダーからの映像を含め3チャンネルのスイッチを行い、コーデックやスクランブルなどの処理をして、渋谷のNHKからBS衛星に送信している。受信側も集合住宅などパラボラアンテナが利用できない環境も考慮してCATVでの伝送も含まれている。現行の放送そのままの放送システムだ。
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8K制作機器。スタジオサブっぽい作りになっており、ここにはCCUやレコーダー、22.2chオーディオミキサーなどが並んでいる。オーディオのコントロールはすでにある市販品を使用しているということもありかなりのスペースをとっている。
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8K衛星放送実験システム構成図に小さく書かれていた8Kスイッチャー。技研の研究項目にスイッチャーは入っていないが、4KスイッチャーのようにHD-SDIを束ねて使用すれば理論的には8Kはいつでも対応可能だ。ただし、HD-SDIが16chで8Kの1chに相当するので1chあたり16本ものケーブルを接続しなくてはならない。これではあまり実用的とはいえず、今回光ファイバーを複数束ねたU-SDIを使って接続されている。
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U-SDI用のコネクター。大きさはBNCとほぼ同じだが、光ファイバーが24本束ねられている。このケーブル1本で12bit/4:4:4の120Hz 8Kの映像のほか、22.2chの音声信号を伝送が可能。
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放送を行うためには圧縮やスクランブルをかける必要があり写真はそのための装置。映像の圧縮はMPEG-H HEVC/H.265で行われ22.2chの音声はMPEG-4 AACとなっている。映像と音声はMPEG-H MMTで多重化され、リアルタイム処理可能なMMT対応スクランブル装置でコンテンツ保護と制御が施される。
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8Kのディスプレイというと大型なものが多かったが、放送が始まり家庭への普及を考えると小型のディスプレイも必要になってくる。写真は13.3型の有機ELディスプレイと55型の液晶ディスプレイ。
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8Kの放送を地上波を使って伝送する次世代地上放送のための大容量伝送技術。熊本県で行った8K伝送実験に続き都市部での伝搬特性を把握するため、渋谷のNHKと世田谷の技研でリアルタイムで映像を伝送。垂直水平偏波を使っており、4096QAM変調信号などの伝搬における移動受信特性の改善などの研究を行っている。
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