txt:江口靖二 構成:編集部
一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムは、デジタルOOHにおけるオーディエンスの媒体接触を測定ための標準を示すことを目的とする「オーディエンスメジャメントガイドライン(第1版)」を2021年3月1日に公開したのでその概要を報告したい。
ガイドライン策定の背景
広告主やデジタルOOH設置事業者の双方より、アカウンタビリティ(メディア価値や費用対効果など)の向上がますます求められるようになっている。すでに海外の主要国においては標準化されたデジタルOOHオーディエンスデータが提供されており、メジャメント手法やデータ提供方法が確立されている。以下が世界のデジタルサイネージの業界団体や企業がまとめているメジャメントに関するデータなどへのリンク集である。
- MRC
Digital Place-Based Audience Measurement Standards Version 1.0(2017年) - ESOMAR
Global Guidelines on out-of-home audience measurement ver1.0(2009年) - DPAA
Audience Metrics Guidelines(2008年) - IAB
2018 Digital Out-Of-Home(DOOH)Metrics Glossary(2018年) - OAAA
Out of Home Advertising:Measurement and Analytics Guide for Agencies and Advertisers(2020年) - QUIVIDI
AUDIENCE MEASUREMENT PLATFORM(AMP)(2019年) - Geopath
Geopath Standards and Best Practices(2019年) - Kinetic India
India On The Move(2020年)
このように、近年様々な手法を活用したデジタルOOHオーディエンスデータが個別に提供されるようになってきているため、マーケットの混乱を避けるためにデータの客観性や信頼性を担保する標準化ニーズが高まっている。
ガイドラインの目的と概要
デジタルOOHオーディエンス・メジャメント手法およびデータ仕様の標準化を推進することにより、デジタルOOHメディア価値の透明性・客観性・信頼性を高め、マーケットの拡大に寄与するためのものである。
データ利用者がメジャメントの特徴とそれに伴う調整について理解するために、適正な品質における以下のような測定・推計に関する開示が必要であることを示している。各オーディエンスの階層は、状況に応じて以下の図のように定義される。
(1)媒体設置場所トラフィックの測定の確立
スクリーントラフィックまたはスクリーンオーディエンスがユニークであり、スクリーントラフィックのカウントから推計されるオーディエンスもユニークかつスクリーンオーディエンスの方が少なくなる。
(2)スクリーントラフィックの測定の確立
スクリーンの視認エリア等を加味したそのスクリーンに対する接触可能者数の測定が可能となる。
(3)スクリーンオーディエンスの測定の確立
広告接触可能であり、視認したと見なされる人数の推計が可能となる。
(4)1広告単位のオーディエンスの平均の推計(適用可能な場合)
滞在時間及び1広告の単位も考慮している。
本ガイドラインは、オーディエンスデータの測定組織、メディアオーナー、その他のオーディエンスデータ利用者にとって受入れうるものであることに加え、マーケター、広告プランナー、広告主等がメジャメントのパラメーター等に関する精度を判断するうえでも利用可能なものある。本ガイドラインは、広告主、媒体社などとの議論を重ねて、バージョンアップを今後も継続していくとしている。
ガイドラインの目次
- 1.概要
- 1.1標準化の目標
- 1.2ガイドライン策定における原則(参考:DPAA Principlesより)
- 1.3策定プロセス
- 1.4標準化の範囲と適用
- 2.用語の定義
- 3.デジタルOOHメディアのオーディエンス測定基準
- 3.1測定基準
- 3.1.1オーディエンス
- 3.1.2基礎項目(媒体設置場所トラフィック、スクリーントラフィック、スクリーンオーディエンス)
- 3.1.2.1媒体設置場所トラフィック
- 3.1.2.2スクリーントラフィック(スクリーン視認エリア内への滞在)
- 3.1.2.3スクリーンオーディエンス(視認を伴った滞在)
- 3.1.3拡張項目(広告ユニット単位の平均オーディエンス、平均広告オーディエンス、リーチ&フリークエンシー)
- 3.1.3.1広告ユニット単位の平均オーディエンス
- 3.1.3.2平均広告オーディエンス
- 3.1.3.3リーチ&フリークエンシー
- 3.2その他考慮事項
- 3.2.1オーディエンスの測定及び属性
- 3.2.2クロスメディア検討
- 3.2.3他メディアとOOHの主な違い
- 4.デジタルOOHメディアの測定の詳細
- 4.1測定アプローチ
- 4.2データクオリティ、完全性及び視認の必要条件
- 4.3メジャメントデータの推定
- 4.4データの編集と調整
- 4.5測定頻度
- 5.スクリーンの分類
- 6.参考文献
Appendix
AppendixA:視認エリアが異なる3つのネットワークの平均広告ユニットインプレッション計算例
AppendixB:プロセスチェック
AppendixC:各指標の定義、測定方法のまとめ
AppendixD:標準的な推奨されるデモグラフィック
AppendixE:スクリーンの環境カテゴリ
デジタルサイネージコンソーシアムにおけるこうしたガイドラインの策定は、COVID-19が広がる以前の2019年の11月からスタートをしていたものだ。こうしたデジタルOOHの視聴や接触に関するガイドラインは、ステイホームが求められる状況下におけるデジタルOOHのメディア価値を改めて明らかにするものとして、非常に重要なものである。本ガイドラインは下記のリンクから誰でもダウンロードできる。