txt:VISIONGRAPH Inc. 構成:編集部
SXSW Online 2021の注目セッションをピックアップ!
2021年3月16日~20日の5日間にかけてSXSW Online 2021が開催されました。初の完全オンライン開催となった今年も、世界中からクリエイティブな人々が集まる事で、時代を反映する様々な議論が繰り広げられました。SXSW Online XRと題した意欲的な試みもあり(PRONEWSの特集では詳しいレポートがアップされていますのでぜひご覧ください)、オンラインながらもSXSWらしい未来の可能性を感じる事のできるイベント体験となりました。
今回はSXSW Onlineのセッションの中から、映像制作やエンターテインメント業界の未来に関するセッションをピックアップしてご紹介したいと思います。コロナ禍とテクノロジーの進歩によるオンライン化・バーチャル化が相まって、今年は時代を反映した象徴的なセッションが多く開催されました。
SXSW全体の7つのカンファレンステーマにも、「TRANSFORMING THE ENTERTAINMENT LANDSCAPE:エンターテインメント構造の変革」や、「CULTURAL RESILIENCE IN THE ARTS:アートにおける文化的レジリエンス」といったメッセ―ジが並びました。
※SXSW Online 2021のパスをお持ちの方は、4/18までアーカイブの視聴が可能です。各セッションのリンクからログインしてご覧いただけますので、ぜひお楽しみください
ライブ表現の未来|オンラインの加速によって切り拓かれる、新たなリアルイベントの演出表現
世界各国のAR/VR映像の制作スタジオによるセッションでは、昨年の記事でもご紹介したK-POPのXR技術を取り入れたオンラインコンサートのような事例の裏側にいるクリエイター達の話を聞く事ができました。XR技術を効果的に導入する事で、コロナ禍においてもアーティストがファンとより深い繋がりを築き、新たな収益化のチャンスに繋がる可能性が語られました。
今後はスクリーン上の映像に留まらず、ホログラムを空間に投影する技術によって、リアルでもオンラインでも新たなライブ体験が可能になるそうです。夢のような未来の話はもうすぐそこまで来ているように感じました。
スポーツ鑑賞の未来|家にいながら特等席を体験する
スポーツエンターテインメント業界でのXR技術活用の可能性を探るセッションでは、通信会社のVerizonやXR映像スタジオ、NBA(プロバスケットボールリーグ)とPGA(プロゴルフツアー)の代表者らが登壇しました。5G通信やボリュメトリック撮影技術によって、スポーツ観戦のエンターテインメント性が飛躍的に向上し、より多くのファンを獲得できると言います。
ゴルフ観戦ではARスコアボードのリアルタイム更新、NBAではVRヘッドセットを使ってコートサイドの特等席にいるような視聴体験、さらには世界的アスリートの映像解析データを元にしたレッスンが受けられるVRゲームなど、多様な可能性が広がっています。
映像撮影の未来|研究を加速させて社会的なインパクトを最大化する作品
今年のSXSWにはFeatured Speakerとしてジェームズ・キャメロン監督が登場し、ナショナルジオグラフィックと撮影した海洋ドキュメンタリー作品「Secrets of the Whales」について語りました。3年を費やした海上での撮影では最新の機材が導入され、スーパーコンピューターによるクジラの音声解析等の新たな発見もあったそうです。
さらにセッションでは海洋汚染の問題にも触れ、クリエイターが映像作品を通して環境対策のメッセージを発信した点は非常にSXSWらしいと言えます。作品はDisney+で近日公開予定です。
撮影機材の未来|AR技術を活用したバーチャルカメラ
「Game of Thrones」や「Mandalorian」等の人気ファンタジー作品で、バーチャルCG映像を手がけるアメリカの映像スタジオ"The Third Floor"によるセッション。実際に作品で使用された映像を見ながら、バーチャルカメラと呼ばれるARデバイスを使用した最新の制作手法を紹介しました。
ストリーミングサービスの普及により映像コンテンツの需要が増加し、より効率的かつ斬新なCG映像の制作手法がどんどん生み出されていると言います。構図を考える時点からバーチャルカメラを使用していて、現実とバーチャル世界を融合させながらファンタジー作品を創り上げている制作過程がまさにSF的だと感じました。
映像業界の未来|映像業界とゲーム業界の融合
「アベンジャーズシリーズ」や「Westworld」等の制作で使用されたバーチャルプロダクションの手法を紹介するセッション。Epic Gamesの研究者が登壇し、ゲームエンジンのテクノロジーを活用する事で、映画やテレビコンテンツの映像制作を従来よりも高速化・効率化できる利点を説明しました。
特に昨年からのコロナ禍で、クリエイターのリモートコラボレーションの必要性が高まった事もあり、米国ではバーチャルプロダクションが急速に成長している事を実感させられました。
インディークリエイターの未来|ライセンス収益モデルの問題提起
インディーズ映画を作るクリエイターを、業界全体として守っていく方策を議論するセッション。サブスクの動画配信サービスの普及により、映画配給のビジネスモデルは大きく変わりました。
巨大プラットフォームに利益が集中し、視聴者の需要に応えるようなオリジナル作品は多くの予算をかけて制作されますが、その一方で視聴数の少ないインディペンデントな映画は、ライセンス料が非常に少ないという現状があります。クリエイターがどの様にプラットホームを活用し、制作資金を獲得できるかが大きな課題となっているようです。
VRの未来|ソーシャルグッドをつくるためのVR作品
VRのゴッドマザーと呼ばれるNonny De La Pena氏や、国連のクリエイティブディレクターを務めたGabo Arora氏など、VR業界の第一人者が登場したセッション。VRでは視聴者は映像を見るのではなく、その一部となって体験する事で、描かれるストーリーに当事者意識を持てると言います。
紛争や差別、貧困や気候変動等の差し迫った社会課題に対して、VRというメディアが持つインパクトの大きさと可能性が語られました。セッションでは新たなVR映像制作の手法も紹介され、VRがこれから更に盛り上がるであろう事を期待できます。
まとめ
SXSWには毎年世界中から多くのクリエイターが集まり、解決すべき課題を話し合います。昨年の開催直前での中止とコロナ禍の1年を経て、エンターテインメント業界全体の変化が加速したため、今年は例年以上に緊急性の高い課題が多く感じました。そんな中でも、ワクワクするような新しい技術や、新たな映像表現の話があり、SXSWに集うクリエイティブな人々によって新たな世界が切り開かれていく事に希望を持つことができました。
■ウェビナー開催のお知らせ
SXSW Japan Officeとしても活動するVISIONGRAPH Inc./未来予報株式会社では、SXSW2021で話題となったトピックから、未来の兆しを読み取るウェビナーを4月21日(水)に開催します。
新型コロナウイルスにより開催直前に中止となったSXSW2020から、コロナ禍で人々の生活様式が急速に変容した1年を経て、今年のSXSWでは果たしてどのような議論が繰り広げられたのか。そして、そこから読み取れる未来の兆しとは一体何なのか。
SXSW Online 2021に参加された方はもちろん、来年以降のご参加に興味のある方もぜひご視聴ください。ご参加希望の方はこちらからお申込みをお願いします。
イベント詳細
- 「SXSW Online 2021から読み取る未来の兆し by VISIONGRAPH Inc.」
- 日時:4月21日(水)17:30~19:00
- 場所:オンライン開催
- 参加費:税込3,000円