デジタルサイネージ専門アウトソーシング事業者の登場
ついにデジタルサイネージの運用業務をアウトソーシング受託する事業者が現れた。これはデジタルサイネージ市場の拡大が進む中で、運用にかかる負荷を減らしたいという潜在ニーズがかなりあるからのようだ。
株式会社プラットワークスが、デジタルサイネージ運用業務のアウトソーシング受託事業を開始した。既に首都圏の大手鉄道事業者の広告媒体の運用業務などを開始しているとのことだ。同社はデジタルサイネージの世界ではあまり知られていないのだが、放送の世界では知る人ぞ知る存在である。既に20年以上にわたってテレビ局やIP配信サービスの運用業務に特化した業務を行っており、200局以上の地上波、衛星、ケーブルチャンネルやネット配信プラットフォームの業務を受託しており、日本最大の規模と実績がある。
同社のオペレーション営業部長の曽山佳亮氏は次のようにコメントしている。
曽山氏:デジタルサイネージの世界では、放送以上に業務を効率化することが求められているのではないかと思います。放送とデジタルサイネージの業務フローは基本的には同じなので、当社の実績とノウハウがご活用いただけると思っています。
同社のアウトソーシング受託領域は上図の通りで、特定の業務部分だけでも切り出して受託できるようだ。
同社では既に放送クオリティーの運用や監視業務を24時間365日行っているので、デジタルサイネージ領域に参入する場合でも新たな設備や人的投資といったコストの増加要因はほとんどなく、デジタルサイネージ特有の業務や素材考査の特殊性を把握すればよい。
また、デジタルサイネージシステムは各社各様であるが、既に主要なサイネージシステムのCMSを実際に運用している。同社の親会社である株式会社プラットイーズは、放送局用の営放システムを提供しているが、デジタルサイネージ用のCMSの開発は行っていないので、既存のCMSのオペレーションに特化している。
曽山氏:当社内では各業務を社内でモジュール化しています。各業務モジュールは複数名で構成されるチームで運用しており、これによって継続性と冗長化を実現させています。さらに複数媒体の運用を平準化して行うことができます。
放送とは異なるので24時間365日までの監視業務が必要なサイネージの事例は多くはないと思うが、こうした有人監視を200名体制で行っているというのは、デジタルサイネージ事業者には非常に安心感があるはずだ。アウトソース費用に関しても、前述の理由からサイネージ事業者が社内リソースを使うよりも十分効果がある価格で提供できるという。サイネージ事業者が運用業務から解放されることで、媒体開発や営業、クリエイティブなどの領域に社内のリソースを振り向けることができるという訳だ。
今、アウトソーシング事業者登場の訳
放送局が業務をアウトソースするということは以前には考えられないことだったが、今では当たり前になってきている。放送よりも遥かに小規模で運営されているデジタルサイネージでは、運用業務は外部委託した方が媒体側にとってもありがたい。これまで専門アウトソーシング事業者が登場しなかった、あるいは専門性のない事業者しか存在しなかった理由は、運用監視体制の確立とノウハウが必要だったからだ。ここに来て、広告利用はもちろん、販促も含めたデジタルサイネージが普及するにつれて、こうしたアウトソーシング事業者からすると、小さな運用業務の積み重ねでも採算が取れる規模に市場としてなりつつあるのだ。
また、こういったアウトソーシング事業者の登場は、サイネージ利用者だけではなく、サイネージを売る側のメーカーやシステムベンダーにとっても朗報になるはずだ。これまで継続的な運用を行うことに対して二の足を踏んでいた潜在ユーザーに、安心して紹介できるからだ。こういったことからもデジタルサイネージ市場が拡大を続けていることがよくわかるのではないだろうか。