![Mamiya RZ67 Pro II + Leaf Aptus 22[中判カメラANTHOLOGY] Vol.05メイン写真](https://jp.static.pronews.com/pronewscore/wp-content/uploads/2023/12/231227_mamiyarz67_01.jpg)
中判デジタル自体がニッチな分野ではあるが、今回はよりディープでマニアックな内容になっていることをご容赦いただきたい。
カメラは見ての通り『Mamiya RZ67 Pro II』を使用。デジタルバックは編集部のコレクションから『Leaf Aptus22(2005年発売)』をお借りした。Leaf(リーフ)はイスラエルのデジタルバックメーカーである。人肌のやわらかな表現や独特な色味が魅力で、かつてビューティやファッション業界で定評があった。
Leaf Aptus22 の大型センサー
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Aptus(アプタス)とは、パソコンと繋がずに単体で撮影できるようになったLeafのデジタルバック名だ。フェーズワン同様、各社カメラシステム向けに発売されていた。この個体はハッセルHマウント向けのものになる。
センサーサイズは48×36mm。ちょうど35mmフルサイズセンサー2枚分の面積だ。画素数こそ2200万画素と今では普通に思えるが、現在主流の中判デジタルよりも大型のCCDセンサーを搭載している。
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当時、大小2つのサイズがラインナップされており、小さい方が「4433(現在、中判デジタルの主流はこのサイズ)」一回り大きい「4836」を選ぶことができた。当然大きい方が高価で、それぞれのサイズで底画素、高画素モデルが存在した。また、そのすべてが16bit記録のダルサ製CCDセンサーである。
2009年にLeafはMamiyaと資本提携し『Mamiya Leaf』を掲げている。
マミヤ製のデジタルバック「DMシリーズ」は「Leaf Aptus IIシリーズ」と同じもので、アプタス銘のものはその後もハッセルやコンタックス向けに販売をつづけた。8000万画素の645フルフレーム機や、ハッセルVシステム向けにレボルビング機能のある機種まで、多種多様に存在する。ちなみに本機では、後の『Aptus-II 5 / DM22』と同じセンサーを搭載している。
実は、筆者が初めて購入した中判デジタルが、マミヤ用の『Aptus22』である。
当時使っていた135判のデジタル一眼レフと根本から異なる写りに心を奪われ、その虜となった。自分の中でフィルムの呪縛から解き放たれた日だ。その後も二台のアプタスを購入するなど、謂わば「道を踏み外すキッカケ」となった機種でもある。
Mamiya RZ67 Professional II
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RZ67はマミヤが1982年に発売した6×7判の定番カメラで、スタジオや写真館などで多く使われた優秀な道具である。機械式のRB67(RBはレボルビングの意)から、RZでは電子式に代わり、絞りやシャッタースピードが電気的にコントロールされるようになった。AEプリズムファインダーを使用するとAEでの撮影も可能だ。
今回使用した『RZ67 Pro II(1993年発売)』は中間シャッターが切れるようになるなどした進化系である(それまでは1段ずつのシャッターしか切れなかった)。
後にデジタル完全対応の『Mamiya RZ67 Pro II D』と電子接点付きのアダプター『HX701』が発売され(Mamiyaマウントのみ対応)ケーブルレス&撮影情報のExif記録が実現しているが、今回使用したのは『RZ67 Pro II』であり、撮影データに絞りやシャッタースピードは記録されない。
また、今回使用したHアダプターは社外製のものだが、実写を見る限り精度はそれほど悪くないと思われる。
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マミヤRZ、RBシリーズの最大の特徴はこのレボルビング機能だ。デジタルで使用する際にもこの機構は画期的でさえある。ハッセルVシステムの場合は一度デジタルバックを外して縦に付け替える必要があるため、デジタルバックの母艦としてサイズは大きくなってしまうがこの利点は大きい。
そして2つ目の特徴は、本体側の蛇腹を繰り出してピント合わせをするということ。おかげですごく寄れるし、かなりピント合わせがしやすい。
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カメラへの装着
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RZ67 Pro IIのフィルムバックを取り外し、Hマウント用のアダプター経由でアプタス22を取り付ける。Leafの場合、デジタルバック側で『Mamiya RZ 67』とカメラを指定し、レンズのシンクロ接点と繋ぐだけで撮影可能な状態となる(必要なのはシャッターのタイミングを伝えるためのシンクロケーブルのみ)。しかしこのケーブルが致命的なほどに邪魔で取り回しが悪いことは察してほしい。
その昔、マミヤ用のアプタス22を使っていたころに、同じようにRZ67(1型)に装着して使っていたことがあり、10年ぶりの組み合わせである。
当然ながら6×7と比べると画角が狭くなるので、ファインダーに48×36のマスクを重ねて使用することになる(今回はパーマセルテープで代用した)。4433センサーだと急激に画角が狭く感じがちだが、4836センサーではその印象が幾分か解消される。
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アプタスは全機種で3.5インチの大型タッチパネル液晶を搭載。指もしくはスタイラスペン(肩口に収納されている)で操作できる。液晶画面の荒さと視野角の狭さは如何ともし難く、ヒストグラムなしでは露出がさっぱりわからないし、少し角度を変えると見え方が大きく変わってしまい、何を信用していいのか分からなくなる。
後継のAptus II では液晶の品質も多少改善されているがあくまで業務機。パソコンに繋ぐのが前提なので、背面液晶は「なんとなく」見えたら良いくらいで考える方が幸せだろう。
作品撮りに投入
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撮影前にテストをしたところ、使えるはずの Capture One Pro (v11)にてテザー撮影ができないことが発覚。デジタルバックを認識するも、対応していないとアラートが出てしまう。Hマウントだからかと勘ぐってはみたものの、OSやソフトのバージョン、12wのFireWireと条件はクリアしているはずで、原因は不明だ。
すぐさまメインで使用するのは諦め(この背面モニターではチーム間での確認もままならない)、私物のカメラで撮影しつつ、カメラを入れ替えて数カットだけ撮影してみた。
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Flower artist: Risa Ogawa
Hair makeup: Kanna Murokita
Model: Rose Yuzuriha
Photographer: Hidekazu Tominaga
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48×36センサーの場合、110mmレンズは135判換算で79mm相当の画角となる。撮影時の操作性は抜群と言っていいだろう。蛇腹繰り出し式なので最短撮影距離を意識せずに済むし、ピントも非常につかみやすい。シャッターチャージレバーが軽快なテンポを刻み、撮っていて実に気持ちが良い。縦横の切り替えもスムーズだ。重たい三脚に据えて使うのなら文句なし。
唯一無二『ISO 25』実写サンプル
アプタス22最大の特徴は「ISO 25」にあると言えるだろう。
ISO 25が最も高画質で、ISO 100になるとノイズが浮いてくるものの、フィルムの粒子のようで嫌な感じはなく、趣味であればここまでは常用できる範囲だと感じる。晴天でもなければ手持ち撮影は難しいし、スタジオでもやたらストロボの出力が要求される面もあるが、フィルムカメラの代わりだと割り切れば気にならない。我々はデジタルの恩恵に慣れすぎて、便利でなくても写真はちゃんと写るという事実を忘れがちだ。
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基本的にデジタルバックはRAW現像が前提で(AptusはそもそもJPEG記録できない)撮影したままの状態だと色も浅く、動画でいうLOGデータのようだが、現像時にLeaf純正のプロファイルを当て微調整するだけでかなり独特の描写になる。
今回はナチュラルに見えるよう現像しているが、まるでシノゴ(4×5)のポジを眺めているような、ヌメッとした感覚が垣間見える。
まとめ
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10年ぶりにRZ67を使ってみて、第一に感じたのはその重さだった。
今回はストラップを使用せず手持ちで1時間ほどスナップしてきたが、問題なく使えるとはいえ、とても気軽に持ち出せるとは言い難い。何キロあるのかなんて決して考えるべきではない。ISO 25スタートのCCDセンサーと組み合わせるのであればなおさら、三脚に据えて使うのが合理的だろうか。
今回使用した6×7用SEKOR Z 110mm F2.8はシャープネス重視のレンズではなく、お陰でちょうど良い塩梅になったように思う。645用の比較的新しいレンズを使うと、Leafのセンサーは異様なほどのシャープさを発揮し、モアレに悩まされるところまでがセットだ。その部分も最新のCapture Oneで開けばそれほど目立たなくなるから良い時代である。
データを等倍でチェックすると、Leaf独特のシャープさと大型センサーによるボケ、ISO 25の滑らかさが混在していて不思議な感覚に陥る。画素数が少ない(=1画素のサイズが大きい)こともあるのか、35mmフルサイズはおろか他のデジタルバックでもなかなか表現できない色を出してくれる。逆に言えば、このセンサーでナチュラルな仕上げを行うにはある程度の現像スキルを要すると思う。Leafのデジタルバックの中でも、少しクセが強い印象だ。
こんな方にオススメ
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『Leaf Aptus22』発売当時の価格はなんと398万円。業務用の高級機材も年月が経ち、中古でかなり手頃な価格で手に入るようになった。もちろん、年代的にいつ壊れてもおかしくないリスクもあり(修理受付は終了している)、万人にオススメできるものではない。
業務用デジタルバック全体に言えることだが、撮影者である自分の未熟さをカバーする機能は何ひとつないし、常用感度の問題から使用できるシーンが限られてしまうのも痛い。「何を撮ってもイイ感じに写る」なんてマジックも存在しない。個性てんこ盛りの大型センサーからくるポテンシャルを、どう活かすかはすべて自分次第である。
誰でも失敗なく撮れるようカメラが進化し、カメラに対する依存度が高くなっている現代だからこそ、お気に入りのフィルムを使うように『Leaf Aptus』を選ぶのは粋狂ですらある。
これからの時代にクライアントワークで使用するのは不向きかもしれないが、作品撮影であったり、趣味の撮影であれば相当面白いツールになるだろう。低感度で光と向き合う内に、この機種ならではの仕上がりに辿り着くはずだ。
富永 秀和|プロフィール
1983年福岡生まれ。グラフィックデザイナーから転身した職業フォトグラファー。2013年に中古購入した中判デジタルでその表現力の虜となる。福岡のシェアスタジオで経験を積み2022年に上京。
総合格闘技(MMA)ファン。
Website、YouTube、Instagramを更新中
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