α-Sweet DIGITALは、コニカミノルタのデジタル一眼レフ第二弾として2005年に登場。APS-Cサイズ有効610万画素CCDを搭載し、その当時珍しかったセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を備えていた。発売開始時のボディ単体価格は10万円前後
カメラやそれに纏わる感光材料等の製造を祖業とするメーカーは、かつて日本国内には多数存在した。しかしながら様々な要因からその製造をやめたメーカーは少なくない。コニカミノルタもそのひとつで、前身のコニカ、ミノルタともカメラの製造を祖業とする(コニカは感光材料など写真関連用品の製造も祖業である)。いずれも写真史を語るうえでは外すことのできない歴史と名のあるメーカーで、2003年の両社合併に際して私たち写真愛好家はたいへん驚いたものである。そしてそれからわずか3年後の2006年、コニカミノルタは祖業をあっけなく放棄してしまう。その短い間にリリースしたデジタル一眼レフは2機種。ひとつは以前本コラムでも紹介した「コニカミノルタ α-7 DIGITAL」、そしてもうひとつは今回紹介の「コニカミノルタ α-Sweet DIGITAL」である。
コニカミノルタ α-Sweet DIGITAL(以下:α-Sweet DIGITAL)の発売は2005年。コニカミノルタ α-7 DIGITAL(以下:α-7 DIGITAL)の発売された翌年である。クラスとしては、α-7 DIGITALが主に中級者をターゲットとするミドルクラスのモデルであるのに対し、α-Sweet DIGITALはライトユーザーや初心者を主要なターゲットとするいわゆるエントリークラスのモデルである。そのため、α-7 DIGITALと外観のデザインやシェイプは準じたものとしているものの、サイズ的にひと回り小さく、また割愛されている機能があるなどユーザーニーズに即したモデルに仕上がっている。"Sweet"と入るネーミングについても親しみやすさを優先したものと考えられる。
キーデバイスであるイメージセンサーは、α-7 DIGITALと同じAPS-Cフォーマット有効610万画素CCD。このイメージセンサーについてはα-7 DIGITALのコラムでも記したが、当時としてポジティブに言えば他社でも採用実績のある熟成されたセンサー、ネガティブに言えば一世代前のセンサーで、やや新鮮味に欠けるところがあった。ただし、α-Sweet DIGITALはα-7 DIGITAL同様センサーシフト方式の手ブレ補正機構「Anti-Shake」を備えており、それがこのモデルの強力なセールスポイントでライバルとの差別化に貢献したことは述べるまでもない。
そのほか一眼レフのファインダーとして見逃せないペンタ部は、コストのかかるペンタプリズムではなく、安価なルーフミラー式を採用。ただし、スクリーンはミノルタ時代から受け継ぐスフェリカルアキュートマットとすることで、同クラスのデジタル一眼レフのなかでは明るくピントの山の掴みやすいものとしていた。ファインダー倍率については、カタログ値で0.83倍。これは50mmレンズ装着時の値なので、実際は焦点距離倍数1.5で割った0.55倍が実質のファインダー倍率であり、この当時の他社製APS-Cフォーマットのデジタル一眼レフ同様ファインダー画面は小さい。ちなみに兄貴分であるα-7 DIGITALは公称値0.9倍、実際は0.6倍とわずかに大きなものとしている。今にして思えば、せっかくスフェリカルアキュートマットをスクリーンに採用していたのだからα-Sweet DIGITALも頑張ってもう少し倍率を上げて欲しかったところだ。
α-Sweet DIGITALのメーカー発表会は、近々解体が予定されている六本木ロアビルの最上階にある催事場のようなところで行われた。会場までは一旦屋上のようなところに出て夏の日差しの当たる暑い入り組んだ通路をコニカミノルタの社員の後について汗を拭き拭き歩いたように記憶している。発表会自体はα-7 DIGITALに続く同社第二弾となるデジタル一眼レフであったためか、それなりに意気込んだものであった。
余談とはなるが、当時は発表会に参加すると帰りの出口でお土産が渡されたものであるが(最近はそのようなことはほとんどない)、この発表会で渡されたものはユニクロの企業タイアップTシャツであった。もちろんコニカミノルタのロゴなどが入ったもので、聞けば同社社員が手分けして都内のユニクロを回りかき集めたものであるという。もちろん発表会に参加した媒体記者や編集者、カメラライターなど全員分である。当時は今ほどユニクロの店は都内に多くなかったので、さぞご苦労なことだったと思えるとともに、このカメラに対する期待を感じるものであった。
α-Sweet DIGITALの発表会が開催された翌2006年3月、冒頭に記したようにコニカミノルタは祖業のカメラをはじめ写真関連用品の製造事業を停止。コニカとミノルタの合併時以上に写真愛好家を驚かせ、そして残念がらせた。祖業を事業として継続できない理由は当然あるだろうし、またメーカーにとって苦渋の決断だったと思われる。しかし、一写真愛好家として勝手なことを述べさせていただくと、なんとか頑張れなかったものかと当時考えるものであった。
ただ、ミノルタからコニカミノルタへと継承された"α"という名称は、ソニーでもしっかり受け継がれているのがせめてもの救い。そしてその後のαシリーズの飛躍的な躍進はご存じのとおりで、今や飛ぶ鳥を落とすほどの勢いであるとともに、キヤノンとニコンの牙城であったプロの世界でもシェアを拡大するにいたっている。"α"の名を聞くたびに、あの夏の暑い午後、六本木ロアビルで開かれたコニカミノルタ最後のレンズ交換式カメラα-Sweet DIGITALの発表会を今後も思い起こすことだろう。
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大浦タケシ|プロフィール
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌をはじめとする紙媒体やWeb媒体、商業印刷物、セミナーなど多方面で活動を行う。
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。