中判コンパクトという物差し

シンプルな小型の中判デジタルが欲しい!という思いは常に頭の片隅にあった。所有する中判デジタルバックの描写力には満足しているが、日常的に持ち出すにはもう少し身軽な選択肢があってもいい。そこで候補に浮上したのが「Hasselblad X1DII 50C」だった。

世界初の中判ミラーレスカメラ「Hasselblad X1D」の後継機として、大幅な改良が施され2019年に登場したのが本機である。現行機種と比べてしまうと、手ぶれ補正がなかったり、HDRがなかったり、画素数が半分であったり、ワンショット限定のコントラストAFだったりもする。ミラーレスカメラとしての性能だけで言えばかなりの差があるし、もしメインカメラとして使うのであれば、迷うことなく最新機種をオススメしたい。

しかし、1枚200MBにもなる1億画素のデータは大きすぎて、気楽に撮りづらいと感じる人もいるだろう。手ぶれ補正はあるに越したことはないが、なくても普通に写真は撮れる。AFに関しても撮影スタイルによっては十分に実用になる。便利なカメラは135判フルサイズ機で間に合っているから、多くの機能は求めない。いつでも持ち運べて、基本操作がしっかりしており、高感度に強いこと。

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今回この旨をハッセルブラッド日本総代理店セキドの担当者(黒川氏)に伝え、軽量コンパクトなPレンズ(XCD 28/4P、45/4P、75/3.4Pの3本)とともに、デモ機をお借りすることができた。中判コンパクトを求める以上、いくらカメラが小さくてもレンズが巨大であれば意味がないからだ。

本連載では中判デジタルのみを扱うため、135判フルサイズ機の上位モデルとしてではなく、あくまで「中判のサブ機 = コンパクトな4433カメラ」という視点で掘り下げていきたい。

Xシステム誕生の背景

2000年代後半、一般向けのデジタル一眼レフカメラが飛躍的に進化していく中で、高価な業務用の中判デジタル市場は縮小していった。そんな中、2009年にハッセルブラッドCEO兼会長に就任したラリー・ハンセン氏は、なんとカール・ツァイス・アジアの責任者だった人物である(京セラコンタックス、コシナ×ツァイス、ソニーα向けのツァイスレンズにも関わった)。中判だけでは難しいと考えた彼は「Lunar」をはじめとするソニー製品のリブランドを次々と実施。ブランド拡張のためラグジュアリー戦略を取る。

しかしこれは、中判の歴史そのものでもある「ハッセルブラッド」のブランドイメージを損なう原因にもなった。

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2015年1月にCEOに就任したペリー・オースティング氏は、写真業界の人物ではなく、金銀細工師としてキャリアをスタートさせ、その後PradaやGucciなどラグジュアリーブランドで要職を歴任した異色の経歴を持つ。

彼はソニー製品のリブランド路線を撤廃し、2016年1月にはHシステム最終モデルとなるH6Dシリーズを発売する(※連載Vol.10)。そして同年6月、世界初の中判ミラーレスカメラ「X1D」がお披露目された(翌年1月発売)。そしてすぐ後を追うように、富士フイルムから「GFX 50s」が発売される(2016年9月に発表、翌年2月発売)。

ハッセルブラッドXシステムは、プロ向けの業務用機材ではなく、多くの写真愛好家に向けた新しいジャンルの製品である。メーカーのアイデンティティでもある「レンズシャッター機」であるため、カメラ内にシャッターが必要なく、ミラーレス構造と相まって、かなりボディを薄く設計できる。またアルミボディには高級感があり、ぎゅっと凝縮されたような心地よい重量感が所有欲をくすぐる。

周知のようにHシステムは、ハッセルブラッドと富士フイルムとが共同開発したプロダクトであった。この2社がほぼ同時に、一般向けのミラーレスに舵を切り、嗜好の異なる44×33mmセンサーを搭載したカメラを発表したのは実に興味深い。

なお、ここで採用されたソニー製の5000万画素センサー(IMX161)は、2014年にハッセルブラッドやフェーズワンのデジタルバック、一般ユーザー向けのペンタックスにも搭載され、当時既に実績のあったセンサーでもある。業務用の高級機よりはセンサーサイズが小さいものの、その分価格は安く、カメラやレンズを小さくできるメリットがある。

現在では135判フルサイズ機の延長として認識され、同等の機能を求められる市場でもあるが、元々は「中判カメラ」というものを小さくまとめたパッケージなのである。

浅間山を望む(作例)

※作例はすべてPhocusでRAW現像したもの。後継機のX2Dよりも個性控えめな印象がある。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 100 1/400 F7.1
Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 100 1/400 F7.1
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 100 1/800 F5.0
Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 100 1/800 F5.0
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前回の記事「Hasselblad 203FE:フォーカルプレンの残り香」で見た雪化粧の浅間山が忘れられず、第一外輪山の最高峰・黒斑山に登ってきた。既に梅雨入りしていたが天気にも恵まれ、樹林帯を抜けると圧倒的な景色が広がっていた。

季節が変わって見る浅間山はまったく別の顔を見せていた。江戸時代の大噴火で東日本に甚大な被害をもたらしたこの活火山は、今年5月、数年ぶりに警戒レベルが1に下がり、第二外輪山の前掛山までの登山が可能となった。大人気なのは、この黒斑山から一度降りて前掛山に登り、下山したのち「草すべり」という名の急登を経て黒斑山から下山する、1度に3回登山をするコースである。

久しぶりの登山で体力的な不安があった筆者は、高峰高原ビジターセンターを出発して黒斑山に登り、仙人岳まで稜線を歩き引き返すルートをとった。そのため規制解除されたエリアには入らずじまいだったが、それでも標準コースタイムは4時間半。運動不足の身に無理は禁物である。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO 100 1/200 F8.0
Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO 100 1/200 F8.0
※黒斑山から望む浅間山(手前に見える峰が前掛山と呼ばれ、拡大して見ると登山者が写っている)
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 400 1/250 F4.5
Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 400 1/250 F4.5
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連載第32回「スタジオカメラを山へ。Hasselblad H5D-60」ではH5Dを抱えて登山をしたが、中判一眼レフを持ち込む気概があれば、X1DIIの重量は実質「ノーカン」、異様なほど小さく感じた。今回は企画上、XCD45Pと2本の交換レンズを持ち歩いたが、どれも小さく軽いおかげで、カメラが荷物になっているという感覚がないのだ。

そして実際に使ってみて感じた利点は、軽すぎず、小さすぎないこと。矛盾しているように感じるかもしれないが、軽すぎると写真がブレやすくなるし、小さすぎると持ちにくい。手が大きな筆者でも小指が余らない絶妙なサイズ設計である。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 800 1/125 F4.5
Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 800 1/125 F4.5
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 400 1/60 F5.0
Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 400 1/60 F5.0
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思いの外と言っては失礼かもしれないが、少しだけ触れたことのある先代X1Dからは随分と進化していて、大きなストレスなく実用できるカメラである。よほど暗い場所でもない限りは問題なく、AF性能が撮影の妨げになることはなかった。

樹林帯を抜けて稜線に出ると、日差しが強すぎて背面液晶がほとんど見えなくなるため、EVFが頼りになる。意外だったのはこのEVFが問題なく使えたことだ。筆者はEVFのチラつきに対して無駄に敏感で、C社N社以外のEVFではブーストモードが必須。出来の悪いものは数秒覗いているだけで立っていられなくなるほど酔いやすい体質なのだが、本機ではそのような違和感もなく、安心して撮影に集中できた。

    テキスト
Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO 200 1/125 F4.5
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小型軽量でありながら、手ぶれ補正が搭載されていない不安もあったが、実際には特にブレやすいという印象はない。手ぶれ補正に頼った片手撮りでは確実にブレるだろうが、一眼レフと同様にしっかり構えていれば、1/60秒程度であれば十分に実用範囲に入る。

登山中は息が上がるので、シャッタースピードにも余裕を持つ必要があるものの、定評あるCMOSセンサーを搭載しており、ISO感度を上げることに抵抗はない。中判CCDを愛用する筆者の普段使いとしては、このバランスは実用上かなり良い塩梅だと感じる。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 400 1/160 F5.6
Hasselblad X1DII 50C / XCD 45mm f4 P / ISO 400 1/160 F5.6
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Pシリーズレンズ3本について触れていこう。Pはポータブルの頭文字であり、その名の通りに良い仕事をしてくれた。本当に小さくて軽い。

メインとして使用したのは準広角のXCD45P。とにかく小さく軽いこの組み合わせで、これだけ写ってくれたら十分ではないだろうか。F4という開放F値も割り切っていて良い。他の2本と比べると多少AFがもたつく感じもあるが、X1DIIでも十分に実用範囲である。

次にXCD75Pを見ていこう。画角的には少し長めの標準レンズといった具合で、人物撮影はもちろん、山でも使いやすい画角となった。75mmという焦点距離を考えると驚くほどコンパクトなレンズで、見た目よりも軽く398gしかない。レンズ構成も中々に割り切ったものになっていて、使われているガラスの枚数が少ないのが印象的だ。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO100 1/200 F9.0
Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO100 1/200 F9.0
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO100 1/200 F5.6
Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO100 1/200 F5.6
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最短撮影距離は55cm。近接ではボケに少し癖がある。ピント面だけシャープでトロンと柔らかにボケるような繊細タイプではない。ちなみに下の写真はF4.5まで絞っているが、背景との距離次第で印象は変わる。この特性を見越して背景を選ぶべきだろう。4433センサーでの75mmの画角と絞りの具合は、もう少し使い込んで理解する必要があるものの、筆者は結構気に入っているレンズである。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO100 1/200 F4.5
Hasselblad X1DII 50C / XCD 75mm f3.4 P / ISO100 1/200 F4.5
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超広角域のXCD28Pは、XCDレンズ最軽量。45Pと同等の大きさでより軽量なのは驚異的だ。今回の登山では画角が広すぎてあまり出番がなかったが、デジタル補正が強めにかかることを確認したものの、驚くほど堅実な写りをしてくれる。もっと周辺が甘いと想像していたので驚いた。22cmまで寄れるのもうれしい。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 28mm f4 P / ISO 100 1/320 F7.1
Hasselblad X1DII 50C / XCD 28mm f4 P / ISO 100 1/320 F7.1
※通称「草すべり」かなりの急登である。
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    テキスト
Hasselblad X1DII 50C / XCD 28mm f4 P / ISO 100 1/250 F9.0
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Xシステムは、レンズシャッターのためストロボの全速同調が可能である。もしデメリットを挙げるとするならば、シャッター内蔵のためレンズの設計に制限が生まれること。そしてシャッターの分だけ高価になってしまうことだ。

価格を見ていくと75Pが約35万円、28Pは約30万円と、最新のVシリーズレンズよりも20万円ほど安価になっており、45Pに至っては約13万円程度と破格のレンズである。聞くところによると、28Pや75Pはあまり人気がないそうだが、XCDレンズのラインナップにあって、このレンズの存在は重要な気もする。

XCD 80mm f1.9(ポートレート作例)

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ハッセルブラッドXシステムで最も明るいレンズ「XCD 80mm F1.9」をご存知だろうか。あえて非球面レンズを使わない14枚9群という贅沢な光学設計。明るさとボケの美しさにこだわった結果、1kgを超える重量になった。そんな至高の1本である。

今回の企画、当初はPレンズ3本のみでいく予定だったが、SNS上でこのレンズを話題にしていたところ、それを見たセキドの黒川氏によって貸出リストに追加されていた。携帯性を重視したPレンズとは対極にある大きなレンズだが、これは試さないわけにはいかない!と人物撮影でテストしてみることにした。

モデルとして協力いただいたのは、新潟でモデル・タレントとして活躍中の芦川玲一さん(所属:中田写真事務所)。タレントやMCの他、定期的に撮影会を開催されているそうなので、興味のある方はチェックしていただきたい。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 200 1/200 F2.2
Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 200 1/200 F2.2
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/400 F1.9
Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/400 F1.9
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/250 F2.2
Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/250 F2.2
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/200 F2.5
Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/200 F2.5
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X1DIIで撮影した正直な感想を言ってしまうと、とにかくAFが遅くて迷う。それは75Pが天国に思えるほどで、撮影のテンポが削がれシャッターチャンスを逃す。モデルを待たせる時間が長い。撮影中「ちょっと待ってね」という言葉を何度繰り返しただろうか。

しかし、それに耐える魅力は確かにあると感じた。その写りは実にナチュラルで、現代レンズ特有の硬さを感じない。さすがにボケの美しさにこだわっているだけあって、表現力が高いと思う。

筆者は人物を開放で撮ることは少ないのだが、今回は意識して絞りを開け気味に使ってみた。シンプルにレンズが明るいことで選択肢が増え、画の自由度が上がるのは使いやすい。Pレンズのような割り切りが必要ない分、レンズが大きくなっている感覚である。

次に、写りが「中判っぽい」こと。44×33センサーは、135判フルサイズと中判645の中間にあたるサイズで、中判フィルムを使ってきた人間なら物足りなさを感じることもあると思う。絞りを開けることで「中判のあの感じ」がひっそりと顔を出してくれる。

きちんと光を選んで撮ればそれほど違いは見えないが、条件の悪い環境で適当に撮ると、写真に不思議な魔法がかかる。色収差は出るし、決して完全無欠のレンズというのではない。だが完全にハマったときは相当に美しい写りをするだろうことは想像に難くない。

Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/320 F4.0
Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 100 1/320 F4.0
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Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 200 1/160 F1.9
Hasselblad X1DII 50C / XCD 80mm f1.9 / ISO 200 1/160 F1.9
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冒頭で説明したように、筆者の場合このカメラには軽快さを求めるので迷うことなく75Pを選ぶが、この80mmの表現力は確かである。多少大きく1,044gという重量もあるが、メインカメラとして使うのなら問題のない範囲だろう。AFの問題も、カメラ側がX2D/X2DIIならば随分改善しているはずだ。

国内在庫も少なくなっているようなので、このレンズをワンオーナーで長く使いつづけたいという方は要チェックである。

ちょうどいいという価値

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かつて中判デジタルは、限られたプロか愛好家だけが扱う特別な機材だった。それが今日では日常に持ち出せるサイズにまで小さくなり、趣味としても手が届く価格帯で楽しめる時代になっている。

今回、X1DII 50Cを実際に持ち出して感じたのは「ちょうどいい」という求めすぎないことの重要性である。シンプルで迷わない操作性、ほどよい画素数、実用に耐えるEVF、SDカードのダブルスロット。手にするだけで嬉しくなるデザインと道具としての密度。そして超小型のPレンズの存在。

もちろん機材選びには多くの物差しがある。以前記事にしたX2D(※連載Vol.26) も良いものであったし、最新機種には最新機種の良さがあり、単純に機能面だけで見れば、手ぶれ補正やAF性能、画素数など、多くの面で現行機に軍配が上がる。筆者も仕事で使うのならX2DIIを選ぶだろう。なにしろX1DIIは発売から7年が経った型落ちのミラーレスカメラなのだ。すべてカメラ任せで楽して撮影するつもりなら不満が出ることもあるはずだ。

しかし今回のように「中判コンパクト」という物差しで見れば、X1DII 50Cは今でも十分に魅力的な選択肢になる。645サイズのデジタルバックでもなく、多機能なフルサイズ機でもない。1台のカメラにすべてを求めるのではなく、自分に必要なものを見極め、過不足なく揃っているものを選ぶ。割り切ればストレスなく使えるし、何より現在の中古相場を考えれば、これほど贅沢な遊びもない。

求めるのは、中判デジタルを日常に持ち出せること。そんな「ちょうどいい」中判カメラが、X1DII 50Cなのかもしれない。

ちなみにX1DIIは動画撮影(2.7K)にも対応している。X2Dシリーズではあえて省かれた機能であり、こうした違いも面白い部分である。


富永 秀和|プロフィール
1983年福岡生まれ。グラフィックデザイナーから転身した職業フォトグラファー。2013年に中古購入した中判デジタルでその表現力の虜となる。福岡のシェアスタジオで経験を積み2022年に上京。
総合格闘技(MMA)ファン。
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