転送技術
非接触で560Mbpsの転送が可能なTransferJet
ソニーは、非接触で高速にデータ転送をするための近接無線転送技術「TransferJet」のデモを行った。この技術はもともとはソニーが開発したもので非接触のコネクタを実現する接続性の技術。昨年米国で開催される家電製品のトレードショー「2008 International CES」で初めて披露し、2008年夏から業界のコンソーシアムがスタート。現在約40社が参加している。
転送速度は最大で560Mbps、実効レートで375Mbpsとかなり高速なのが特徴で、この速度はUSB 2.0(最大480Mbps)や100BASEのイーサーネットよりも高速な仕様となっている。会場では、コンパクトデジタルカメラでその場で撮影した写真をフォトフレームに転送するデモが行われていた。使い勝手は非接触型ICカードとかなり似ているような印象だ。
来年の早い時期に同技術を使った製品が発売され始める見込みで、コンソーシアムにはキヤノンやニコン、オリンパスイメージングといったカメラを販売しているメーカーや、エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルといった携帯電話会社が含まれていることから、デジタルカメラや携帯電話などに採用されることが予想される。
100MBのファイルを1秒で転送する「Giga-IR」
KDDIは、1Gbit/sの高速赤外線通信「Giga-IR」のデモを行った。この技術は100MBのデータを1秒で転送が可能になる技術。デモではホームサーバにかざすだけで転送がスタートし、数秒もたたないうちに1番組約50MBの2つの番組を転送した。あまりの転送の早さに転送の操作をしたことがわからなかったほどだった。現在のところ商品化は未定だという。
研究開発(情報通信研究機構)
テラヘルツ領域の電磁波に高い感度を持つテラヘルツカメラ
NICT(情報通信研究機構)は、電波と光の境界領域に位置する波長帯「テラヘルツ技術」に高い感度を持つカメラを紹介した。カメラはもともとサーモグラフィーのカメラのセンサーに改良を加えたもので、半導体型非冷却テラヘルツ撮影素子とテラヘルツ用カメラレンズを装備している。癌診断など医療関係や食品検査の分野での応用、煙の奥の状態を確認することができるので災害現場での活用に期待されている。
立体映像、感触、音をリアルに再現する「多感覚インタラクションシステム」
同じくNICT(情報通信研究機構)では、立体視用のメガネをかけて、力覚を提示できるペンで仮想の鏡を触れることができる多感覚インタラクションシステムを実演した。ペンで触る位置、強さ、触り方に合わせて、立体映像、感覚、接触音をリアルタイムで合成するシステムで、メガネをかけてハーフミラーを覗くと、実際にはなにもないのにそこに立体のものがあるように見えたり、触れたり、音が聞こえる。
デモでは、なにもないはずの空間に高松塚古墳から出土した「海獣葡萄鏡」が現れる。デジタイザのペンでなぞると、錆び付いてざらざらした感覚までもがそのままデジタイザのペンから伝わってくる。鏡をペンで回転させると、鏡の重さまでもがデジタイザから伝わってくるのには驚く。将来の応用として、インタラクティブな体験や、トレーニングなどの活用に期待されている。
空中映像を操作できるフローティングタッチディスプレイ
こちらもNICT(情報通信研究機構)の技術で、空中映像を操作可能なフローティングタッチディスプレイのデモだ。デモのモニタは、一見するとガラスもなにもないただの四角い枠だが、その中央にタンポポの映像が空中に投影される。SFの世界を実現したようなその状態だけでも驚きだが、指で叩いたり引きずったりすることも可能。
ピアノの鍵盤を投影したデモでは、実際に鍵盤を叩いて音を出すことができた。ディスプレイの奥にはマイクロミラーを多数並べた光学素子が組み込まれており、このミラーが空中映像を映し出すという仕組みだ。手指を汚染させてはならない手術中や、手指が汚れている料理などの作業中に利用することが期待されている。
眼で操作できるイヤホン
ドコモは、眼の動きでデバイスを操作する新技術を紹介した。iPodなどの音楽プレーヤーは本体のパネルで再生や早送りなどの操作を行うが、それを眼の動きで行うというものだ。外見は普通のイヤホンだが、イヤホンの周囲に電極を設置することで眼の動きを検出する。左右の両眼を右から左に動かすと再生とポーズ、両眼を右に二回動かすと曲送り、両眼を反時計回りに回転させると音量アップなどの操作が可能。この技術は瞳を閉じていても操作が可能だという。