稲田 出

Avidで構築するファイルベース制作ワークフロー

株式会社バッハベルクは、福岡・博多で通販番組を中心にCM制作や企業PV、商品PRなどを手がけるプロダクションとして1996年に設立された。2010年3月、業務拡張に伴う移転と同時に、地上デジタル放送に対応するべくXDCAM-EXなどを導入し、システムの本格的なHD化を行い、現在、Media Composer Nitris DXを整備したオンライン編集室2室に加え、Media Composer Mojo DX×2式、Media Composer Mojo SDI、Media Composerソフトウェアからなるディレクターのためのオフライン編集室4室を備えている。

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ディレクター用のオフライン編集室とリニア編集システム

さらに今回、2007年より導入しているPro Tools HD、ICON D-Controlを最新にバージョンアップ、Media Composer Mojo DXシステムとVideo Satelliteを新設し、MA室の機能の充実を図っている。バックボーンとして2007年より稼働しているUnity MediaNetworkはこうしたシステムを有機的に結びつけ、同社におけるXDCAM-EXによるファイルベース・ワークフローを実現している。

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バッハベルグシステム構成図

企画制作から受電発送まで

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スタジオシーン編集部 部長 今村典裕氏(左)、MA坂本秀樹 氏(右)

商品の魅力を最大限にアピールして購買につなげていく通販番組の制作のみならず、株式会社バッハベルクは媒体マネジメントの株式会社ビーエンタープライズ、受電・商品発送を行うビービーコールなど、通販に必要な事業を傘下にもち、通信販売ビジネスにかかわるすべての業務を一極化し、ワンストップで受注できる体制を整えている。

この度の機材更新について、株式会社バッハベルク スタジオシーン編集部 部長の今村典裕氏は、

「移設に伴い機材更新を行いました。地上デジタル放送の本放送が目前に迫っているということもあり、収録機材にXDCAM-EXを導入してHD化を図ると共に、8TB×2で運用していたMediaNetworkに16TB×2の増設を行っています。XDCAM-EXは35Mbpsフォーマットを採用し、HDワークフローの運用を効率化しています。また、Media Composerは、AMAでXDCAM-EXファイルをネイティブサポートしているので、XDCAM-EXから直接メディアのコンソリデートを行い、すぐに編集が開始できます。ビデオテープからキャプチャする手間が不要になり、効率アップに貢献しています」

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Media Composer Nitris DXオンライン編集室

 

同社スタジオシーンMA担当エンジニアの坂本秀樹氏は、

「今回バージョンアップに合わせてVideo Satelliteを導入したことにより、Media Composerで完成させたビデオシーケンスを、ファイルのエクスポートなどせずに、Pro Toolsと同期させて直接再生することができるようになりました。以前のようにタイムラインをミックスダウンしてAAFでエクスポートする必要がないので、待ち時間もなくなったうえに、Media Composer Mojo DXのフル解像度が使えるのがうれしいですね。さらにICONがPro Toolsの完全リモートになる機能は画期的で、今ではICONなしの作業は考えられないほどです」

単なる素材の共有だけでなく、Pro ToolsセッションとMedia Composerのビデオシーケンスの同期により、ファイルベース・ワークフローで生産性の向上に寄与している。通販番組では、同一の製品でも各放送局向けに多数のバージョンが必要になるとのことが頻繁にある。これは、局ごとに放送基準が異なり、扱う商品が同じでも言い回しや映像などその局ごとに最適化を行うということが必要なためだ。

「クライアントによっては、それぞれの効果を確認するために地上波、CS、BSなど放送波毎に商品注文の電話番号を変えてほしいということもあります。従来このようなバージョニング作業は、手軽で早いという理由でリニアを使っていたのですが、今ではその必要性もなくなりほとんどMedia Composerで行っています」

フィードバックによる迅速な対応

「一般の番組と異なり、通販番組では視聴者からのレスポンスが非常に重要になります。番組を放送するとほぼ同時に視聴者からの電話がコールセンターにかかって来るのですが、中には反応の芳しくないものもあります。コールセンターからのこうした情報を制作側にフィードバックし、ナレーションやテロップの差し替えなどを行って、レスポンスを向上するため可能な限りの試行錯誤を繰り返します。この試行錯誤は、もちろん編集とMAで同期している必要があります」

これは、企画制作から受電発送まで一貫して行える体制だからこそできる対応であると同時に、こうした柔軟な対応こそがAvidのシステムが威力を発揮するシーンともいえる。 坂本氏はさらに

「MAルームにVideo SatelliteとMedia Composer Mojo DXを導入したことで、MAルームからMedia Composerのビデオシーケンスの編集点を確認することができるようになり、より試行錯誤がしやすくなりました」
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Pro Tools HDとICON D-Control からなるMAルーム

Unity MediaNetworkによるファイルベースでの素材の共有やMedia ComposerとPro Toolsとの連携により、映像の完成後に限らず制作中であってもMA作業に取り掛かることができる。バッハベルクで実現している柔軟かつ迅速なファイルベース・ワークフローは、Avidのシステムが縁の下から支えているといえるだろう。

将来に向けて

「家庭用のテレビのほか、番組でも3Dの放送がCSなどを中心に始まっています。裸眼で3D視聴できるディスプレーなど、最近は性能の良いものが出ているようなので、3Dへ向けた潮流に対応しつつ、商品を紹介するシステムとして利用できたら面白いと思っています」

と今村氏は、締めくくる。 地上波での3D放送にはもう少し時間がかかりそうだが、CSやデジタルサイネージなどでは3D化へ向けて進行中だ。Media Composer Nitris DXを使って3Dの通信販売番組や商品紹介システムなどを制作する日も近いのかもしれない。

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マシーンルームに設置されたNitrisDX、Media Array、Pro Tools HDなど

 
バッハベルク
http://www.bachberg.co.jp/

[On Avid]Vol.02 ● [On Avid]Vol.04

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