txt:江口靖二 構成:編集部
サイネージを巡るハッカソン
街中のディスプレイがデジタルサイネージであること、特にタッチパネルなどで操作ができるものについては、そもそも操作できることが認知されていない場合が多い。そこで、デジタルサイネージが提供している機能を、誰にでもわかりやすく伝えられるように、ピクトグラム(案内用図記号)の必要性が問われてきた。そのための第一歩として、8月2日に「デジタルサイネージ ピクタソン」というデザインハッカソンが開催された。
デジタルサイネージの発展、成熟に伴い、商業施設や交通機関等でインタラクティブ性をもったガイド用のサイネージ(=アテンドサイネージ)を目にする機会が増えてきた。しかし現状では、それらを一目見て、どんな情報を取得出来るのか、どうやって使うのかをすぐに理解することは難しく、利用促進を妨げる一因となっている。そのためにディスプレイに「タッチできます!」といったシールを貼ったりしているケースも多く、本末転倒というか、情報提供ができていないことをさらけ出しているという、恥ずかしい結果になっている。
タッチしてもらうための涙ぐましい努力
今回のピクタソン開催の目的は3つある。一つは広義でのデジタルサイネージの認知や利用を促すための啓蒙活動という部分。もう一つは実際に作成したピクトグラムを、実査に使ってもらえるような取り組みを進めていくこと。最終目的は国際標準化や国内標準化であり、2020年のオリンピックを契機に、デジタルサイネージに関する公式なピクトグラムが策定されることである。
最後の一つは、こうしたデザイナーの人たちに、デジタルサイネージという仕事場が存在していることを知ってもらうことだ。デザイナー、特にグラフィックデザインの世界と、デジタルサイネージが今のところあまり近いとはいえない。静止画のグラフィックでももちろんいいが、モーショングラフィックスのような動画の世界も、デジタルサイネージ側では仕事が急速に増加することになる。こうした業界マッチングの意味も今回は含めている。
ピクタソンとは
ピクタソンとは、ハッカソンとピクトグラムを組み合わせたもので、一定時間に与えられたお題(課題)のピクトグラムを作成するイベントだ。ピクタソンのサイトには
2013年7月27日に第1回が開催され、その後定期的に開催しています。非言語コミュニケーションの鍵とも言えるピクトグラムは、世界的に見てもユニークな言語を使っている日本人こそが積極的に向かい合っていくべきものです。Pictathonでは設定されたテーマのピクトグラム制作で競い合っていただくことで、クリエイターのスキル向上、ピクトグラム文化の振興を目指します。
とある。今回のデジタルサイネージ ピクタソンで作成されたピクトグラムは、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の平成27年度事業である、「オリンピック、パラリンピック開催に向けた案内用図記号(ピクトグラム)の作成事業 」と連動している。今後は同事業を通じて、 今回の受賞作品がそのまま、あるいは手を加えられ、JISZ8210への登録及び国際標準化を促すため、経済産業省へ働きかけを行なっていく。具体的な作業プロセスは未定だが、オフィシャルなデジタルサイネージのピクトグラム策定を目指していく。
実行委員長の中村伊知哉氏デジタルサイネージコンソーシアム理事長 審査委員の定村俊満氏
日本サインデザイン協会会長
宣伝会議 マーケティング研究室 主任研究員 中澤圭介氏
NTTドコモ スマートライフビジネス本部 伊能美和子氏
デジタルサイネージコンソーシアム UX部会 河野道成氏
オリ・パラリンピックに向けたピクトグラムの作成事業の説明をする交通エコロジー・モビリティ財団の竹島恵子氏
ピクトグラム作成の様子
選考は全参加者と審査委員両方の総合得点で行われた
受賞作品紹介
今回の受賞作品を紹介しよう。決勝での課題は 「アテンドサイネージ」、「多言語対応」、「緊急情報配信」の3つである。
© Digital Signage Consortium上段:最優秀賞 チーム名「アメポケ」
下段:審査員特別賞 チーム名「M-DESIGN」
最優秀賞のチーム「アメポケ」は、デジタルサイネージのシステム・コンテンツを手がけるアメイジングポケットのデザイナー小島さんと竹下社長
最優秀賞の「アメポケ」の作品は縦画面を意識したところと3つのデザインの連携が評価されたもの。審査員特別賞の「M-DESIGN」は完成度の高さがポイント。最優秀賞と接戦であったが、デザインコンテストではなくピクタソンの趣旨からしたら、「アメポケ」の作品が評価された。しかしこれは外せないということで急遽、審査員特別賞を追加したもの。
© Digital Signage Consortium上段:ドコモ賞 チーム名「jugemu」
下段:UX部会賞 チーム名「四半世紀」 © Digital Signage Consortium
上段:日本サインデザイン協会会長賞 チーム名「sachimaru」
下段:宣伝会議賞 チーム名「サイホー」
イベントとしても非常に盛り上がり、参加したクリエイターからも「ぜひ今後も継続して開催してほしい」との声が集まった。ピクトグラムをきっかけにして、デザイナー、デザイン業界との接点が増えることを期待している。
集合写真