txt:江口靖二 構成:編集部

マロニエゲート銀座で見つけた花時計型サイネージ

商業施設でのデジタルサイネージは、販売促進と館内案内などのインフォメーション提供として使われることが多い。また、もう一つの利用目的とし、空間演出のために使われることも多い。3月にオープンした「マロニエゲート銀座2」には、ユニークなディスプレイ配置をした事例があるので紹介してみたい。

花時計の全体像。生花とデジタル機器が組み合わさっている

マロニエゲート銀座は、旧プランタン銀座がリニューアルオープンしたもので、銀座の商業施設の中でも大きなものとなる。隣接した3棟の建物がそれぞれマロニエゲート銀座1、2、3と呼ばれている。このうちのマロニエゲート銀座2のメインエントランスに、今回紹介するサイネージが設置されている。

ディスプレイで表示される花時計の時計部分。これはアプリになっている

全体構造は正面に花時計が配置され、中心にはディスプレイによるアナログ時計があり、その周囲が生花で取り囲まれている。ここは季節の花が飾られ、ディスプレイもそれに対応した花を文字盤に当たる部分に表示している。銀座の商業空間のエントランスにふさわしい、華やかな空間を創り出している。

9台のウルトラストレッチLCDが円周上に立ち並ぶ

この花時計の奥には、縦長のディスプレイが9台、円周上に直立して設置されている。これら9台のディスプレイの間は30センチほどの隙間空間がある。表示されているコンテンツはこの空間を計算して制作されている。

コンテンツは花時計にふさわしいような、季節感のある花や樹木と、季節ごとのイベント、今の時期であれば夏の旅行をイメージさせるもの、他にはマロニエゲートのロゴがモーショングラフィックスで表示されている。

ディスプレイはLG製のウルトラストレッチLCDで、解像度は600×3840、画角は9:58という超縦長である。長辺側の大きさは2158ミリあり、身長よりも高い。これを筐体に収納した上で9台を円周上に縦向きで設置をしている。エントランスの設置空間の大きさから、9本のLCDの間隔は、ちょうどLCDの横幅と同じくらいの間隔が空くことになる。そのためにコンテンツのキャンバスサイズは、横がおよそ10K、縦が4Kである。

キャンバスとLCDの関係はこちらの図のようになっている。実際には9台のLCDを3本づつを1セットとして、それぞれを3台のPCで構成して4K相当の送出をしている。各PCではビデオカードによって必要な部分を切り出している。

実際に制作しているコンテンツを一覧できるプレビュー映像はこちら。

10K相当のキャンバスの映像を実写動画や写真、CGなどを基にいかにしてローコストで制作できるか、スリット状で円周上に配置されたディスプレイを活かしたクリエイティブ、9台のLCDの同期がずれること無く4K相当の映像を表示できること、CMSでこれら複数コンテンツを営業時間中に連続的に表示できることなどがこの事例のポイントである。企画制作システム構築はビズライトテクノロジー社によるものだ。

こうした、デジタルサイネージならではの設置法、コンテンツ表現は現場でないとなかなか再現が難しい。ぜひ銀座に行かれた際にはこの事例を実際に見ていただきたい。

WRITER PROFILE

江口靖二

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。