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富士フイルムからプロジェクターが登場!

富士フイルムは2月13日、東京都内にてプロジェクターの新製品発表会を行った。発表されたのは、屈曲型二軸回転機構レンズを搭載した富士フイルム初の超短焦点プロジェクター「FUJIFILM PROJECTOR Z5000」(以下:FP-Z5000)。本体を動かさずにさまざまな方向への投写や75cmの至近距離から100インチの迫力のある大画面映像を映し出せる特徴があり、発表会内では効果的な投写方法を実演デモも行われた。

東京・都内で新製品発表会を開催

画期的なプロジェクターで、世界のプロジェクター市場にゲームチェンジを起こす

発表会は、最初に富士フイルムホールディングス 代表取締役社長COOの助野健児氏が登壇。同社の光学・電子映像事業部は1944年の事業発足で70年を超える歴史があり、4K/8K対応の放送用レンズやシネマ用レンズ、国境警備などに使われる超遠望監視カメラ用レンズなど、さまざまな分野において数々のイノベーティブなレンズを世に送り出してきてきたと紹介。

その光学・電子映像事業部が新たな領域へ進出する製品の第一弾が今回発表するFUJIFILM PROJECTOR Z5000で、創立85周年を記念して万を持して発売する製品だという。

「これまで設置したくてもスペースの制約でプロジェクターが置けなかった、あるいは投写できなかった場所に高輝度、高画面の投写ができる。プロジェクター市場を大きく成長させる可能性を秘めた革新的な機能が詰まった製品と自負しており、この画期的なプロジェクターで世界のプロジェクター市場にゲームチェンジを起こしていく」と思いを語った。

富士フイルムホールディングス 代表取締役社長・COO 助野健児氏

続いて登壇した富士フイルム 光学・電子映像事業部長の飯田利久氏は、FP-Z5000の特長を紹介。FP-Z5000の名称は、究極のプロジェクター実現への思いを込めてアルファベットの最後にある「Z」とネーミング。レンズをあしらったロゴを実現した。

富士フイルム 光学・電子映像事業部 事業部長 飯田年久氏

FUJIFILM PROJECTOR Z5000のロゴ

飯田氏は「富士フイルムはなぜプロジェクター市場に参入したのか?」その理由を紹介した。プロジェクター市場の台数はここ数年、約780万台から800万台でほぼ横ばいの状態。「なぜプロジェクター市場が伸びていないのか?答えは新たな設置や用途でプロジェクターが広がっていないから」と語る。

780万台のプロジェクターの市場は、設置済みのプロジェクターの買い替えの需要がほとんどで、潜在ニーズを掘り起こせないていない。設置スペースの制約が需要拡大を妨げていると分析を紹介。

「潜在需要、潜在ニーズを解決するプロジェクターを富士フイルムは考えた。今まで置けなかったスペースにプロジェクターを置ける。これがFUJIFILM PROJECTOR Z5000である」と力を込めて紹介した。

プロジェクター市場の動向はここ数年、約780万台/年で総需はフラット

精密なメカ設計と光軸調整技術の両輪で、屈曲型二軸回転機構レンズを実現

飯田氏はFP-Z5000の特長を「前後、左右、上下、6方向へ投写することが可能」「スクリーンまで75cmの至近距離から100インチの投写が可能」「上下に82パーセント、左右35パーセントの範囲で大きくシフト」「ギャラリーや高品位な空間にフィットする高さ108mmに抑えたコンパクトサイズ」の4つと紹介。

特に「歪みのない大画面は富士フイルムだから実現できた」と強調。屈曲型二軸回転機構と呼ばれるレンズには、20枚以上のレンズを使用し、その開発には富士フイルム独自開発の光学設計ソフトによって高度なレンズ設計が行われているという。さらに、最前面のレンズには、超短焦点と大幅なレンズシフト機能を実現するための複雑な大口径球面・非球面レンズを採用している。

「20枚以上のレンズとメカ部品を高精度に組み上げていく量産技術がなければ、このプロジェクターは実現しなかった」と付け加えた。

大口径球面・非球面レンズと上下82%・左右35%のレンズシフト機能を搭載

二軸回転機構レンズのカットモデル。独自開発のソフトウェアによる精密な設計により、大口径屈曲式レンズを実現

レンズを上下前後左右の向きに切り替えることで、本体を動かさずにさまざまな方向へ投写することが可能

20枚以上のレンズと回転機構の搭載となると、性能を出すための光学調整も相当困難であることが予想される。工場では、6方向への投写と大幅なレンズシフト機能、高い解像を実現するために、高さ約3mのチャートを投写して、職人が1点、1点光軸を合わせて組み立てられているという。「富士フイルムには、6方向どの向きにレンズシフト機能を行っても高い解像を実現できる光軸調整技術がある」と胸を張る。

組み上げたレンズは、10.8cmの高さのコンパクトなデザインを実現。縦置きにすれば設置スペースを極限まで小さくできる。

本体色は、ブラックモデルに加えてホワイトモデルも用意。暗い落ち着いた空間には黒、博物館のような白い空間はホワイトが選べる。ホワイトモデルは今夏発売予定。

小型軽量、フラットなデザインを実現

FP-Z5000のカラーバリエーションとしてホワイトモデルをラインナップ。会場ではホワイトモデルも参考展示されていた

スクリーンの真ん中からずらして設置できる。景観を損なわない。プロジェクターを地べたに置ける。アクティブスペースが広がる。メリットは多い

展示スペースでは、FP-Z5000の実演展示が行われた。デモコーナーでは、レンズシフト機能や回転レンズを活用した5種類の投写を実演。そのうちの1つが、天井投影/床投影で、上下一台ずつ合計2台のFP-Z5000で天地の高さ2.5mの空間に約300インチ相当の巨大プロジェクションの投写を行った。

天井の高さは2.5m、天面サイズは337インチ、床面サイズは272インチ

これまでの天井投写は、プロジェクターを上に向けて固定したり部屋の中央にプロジェクターを配置する必要があった。しかし、FP-Z5000はレンズ部分を回転させるだけで天井への投写が可能。レンズシフト機能を使い、プロジェクターを隅に置くことができるので、景観を損なわないで演出できるのも見逃せないポイントだ。

上下一台ずつの合計2台のFP-Z5000で投写を行った空間のデモ。プロジェクターから投写しているとはすぐに分からないだろう

天井への投写

これまでプロジェクターを天井に向けて投写するのは困難だった。しかし、FP-Z5000はそのまま配置してレンズを天井に向ければ実現できる。ワイドシフト機能により、スクリーン中央に配置する必要はない

床への投写

これまでは床にプロジェクターを向けるのも困難だった。FP-Z5000はレンズの向きを自由に変えられるため、天吊りにも対応しやすい。今後、天吊り金具も周辺アクセサリーとして準備されるという

ホームシアターのデモコーナーでは、10mのワイドスクリーンプロジェクションを実現。通常のプロジェクターは、シフトすると映像が歪むためにエッジブレンディングは困難になる。しかし、FP-Z5000はシフトさせても映像は歪まないので、3台の投写を違和感なく1本の映像に実現していた。

また、スクリーンのレイアウトによっては、投写が他のプロジェクターにがかかってしまうことがある。FP-Z5000はレンズシフト機能を使って画にかからない位置に配置できたり、大画面映像の景観を損なわない位置から投写できるのも特徴だろう。

ホームシアターのイメージ。レンズシフト機能を使っても歪みが少ないので、境目がわからないエッジブレンディングが可能

一番奥のスクリーンに注目してほしい。左側に配置したFP-Z5000は、シフト機能を使ってできるだけ左側から投写。シフト機能によって、右側のプロジェクター本体に画がかぶらないようにできる

ホテルのフロントイメージのコーナーでは、アーチ型のスクリーンにプロジェクションマッピングを実現。これまでのプロジェクターでは、ホテルのフロントとカウンター背面のスクリーンの距離が短かったり天井が高くて天吊ができなくて投写は困難だったが、FP-Z5000は本体をカウンター内に隠して投写できたり、アーチ型のスクリーンに投写することによって、高品位なホテルのカウンター空間を実現できるとアピール。

FP-Z5000を使ったホテルのフロントの演出

ホテルのカウンターに100インチのプロジェクションマッピングを行った例。企業などが主催する展示会の受け付けでも同じことができるだろう。LEDパネルを配置する予算が厳しい場合にも使えそうな方法だ

プロジェクターからスクリーンまでの距離は短いが、FP-Z5000は100インチのプロジェクションマッピングが可能

会場デモ以外の事例紹介も行われた。横浜のみなとみらいにある富士ゼロックスのSmart Work Innovation labには直径5メートルの円柱があり、そこに300インチの投写を実現したという。通常のプロジェクターで投写を実現するのは、プロジェクターを高い位置に設置しなければいけない。FP-Z5000は、床から約50センチ、高さ1.7mの距離から300インチの投写できたとのこと。

もう1つは、毎年5月に栃木県で行われている栃木映画祭に向けた建築物の壁面投写検証の事例では、屋外の大きな白い壁に約900インチの投写をするには櫓を建ててプロジェクターを20m先に置かなければならなかった。FP-Z5000は、床置きの6.8mからの投写で約900インチの投写が可能で、これまでより1/3の投写距離により観客スペースの確保や、省人化で対応が可能になったと紹介した。

Smart Work Innovation labの事例。下がFP-Z5000で300インチを投写している

FP-Z5000の使用イメージ

最後に、販売計画について述べた。発売2019年4月で、価格はオープン価格。税別100万円を切る価格になるという。FP-Z5000は、富士フイルムのプロジェクターの第一号機で、「レンタル事業者や空間を演出する施行業者に販路を拡大していきたい」と語り、製品説明をまとめた。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。