txt:江口靖二 構成:編集部
最新のデジタルサイネージの動向と今後の展望
同時開催のInterop Tokyoと合わせて、毎年14万人もの参加者があるDSJ(デジタルサイネージジャパン)は、2020年はオンライン開催となった。筆者は当初から実行委員を努めているが、オンライン開催は、はじめての試みとなった。オンライン開催の決定が2月であったこともあり、短時間で実現できることを模索をした。PRONEWSでも毎年イベントの様子をレポートしてきたが、今回はオンラインでの実施内容を報告しておく。
オンライン開催にあたっては、最新のデジタルサイネージの動向と、今後の展望を中心としたセミナーを3本実施した。これらは全てアーカイブされており、下記からご覧いただくことができる。
筆者も登壇する機会を得た。これは6月23日にライブ配信されたものだ。テーマはOOHメディア全体がいま突きつけられているその媒体としての存在意義と、今後の対応についてである。
「STAY HOMEでOUT OF HOME?」デジタルサイネージジャパン実行委員(同)江口靖二事務所 デジタルメディアコンサルタント 江口 靖二
続いては電通の唐沢氏による近未来の日本のOOHについての考察である。これは新型コロナウイルス感染症の有無に関わらず、欧米に比べて周回遅れとも言えるデジタルサイネージ業界が取り組むべきことをイギリスの事例を元に展望している。
「イギリスから読み解く近未来の日本のOOH」(株)電通 アウト・オブホーム・メディア局 ロケーション・インテリジェンス部長 唐沢 央氏
最後も前述の2本とも深く関係しているが、媒体として新たな取り組みを行った、交通広告におけるダイナミックデジタルサイネージ事例の紹介を、広告主、広告会社、媒体社がそれぞれの立場から課題と期待を語り合うセッションであった。
ダイナミックDOOHの手応えと期待(株)ビズライト・テクノロジー DOOHメディア部 三島 康弘氏
サッポロビール(株)マーケティング本部 コミュニケーション開発部 メディア統括グループ 主任 小林 夏実氏
(株)オリコム 営業本部 第一営業局 第三営業部 ディレクター 伊藤 勇一郎氏
これらで指摘されたことは全て共通している。ロケーションだけに依存し、時間枠を提供するだけといった、いわば不動産ビジネスともいえる従来のデジタルサイネージビジネスの課題と、特に広告領域での今後の展望を考察している。こうした問題は数年前から顕在化していることだ。
インターネットの世界では当たり前に行われていることで、最近ではテレビの世界でも徐々に行われている、広告の指標や効果に関するさまざまな事項が、デジタルサイネージでは圧倒的に遅れている。
同じ時期、6月23日に、デジタルサイネージの業界団体である(一社)デジタルサイネージコンソーシアムがウェビナーを開催した。残念ながらこちらは事前登録制のライブ配信のみで、アーカイブを見ることはできない。これはデジタルサイネージの普及拡大をミッションとしている同団体の内部のものとして、また登壇者の1人としても極めて残念なことある。
ニューノーマルな時代において、イベントや展示会ができること、やるべきことはまだまだたくさんあるはずだ。ウェビナーひとつとっても、ライブとアーカイブを単純に配信するだけではなく、もっと拡張させることができるのではないか。
たとえばアーカイブを再放送のように日時を決めて(編成して)何回か配信し、登壇者や関係者がアーカイブの再配信時には言い足りなかったことを補足したり、視聴者が音声で直接質問できる仕組みなどがあってもいいのではないだろうか。Facebookの「動画ウォッチパーティー」がイメージに近い。完パケ編集された映像にはない時間の共有感と、現場では行いにくい質疑応答が臨場感を持って実現できると思う。