Kandao Technology(本社:中国・深圳、CEO:Dan Chen氏)は、2023年の1月5日~8日に米国・ラスベガスで開催された全米民生技術協会(CTA)主催の世界最大のエレクトロニクス見本市CES 2023において、360°アクションカメラ「QooCam 3」、「QooCam 3 Ultra」、そして、360°会議カメラシステムの最新機種「Meeting Ultra」などを公開・展示した。
今回の記事では、特別に入手した製品写真の外観やスペック等の最新情報を分析し、これら新製品のアドバンテージを考察する。
CES 2023 Kandaoブースの模様
QooCam 3について
QooCam 3は、Kandaoのコンシューマー向けVRカメラのQooCamシリーズにおける最新の360°カメラとして発表された。QooCamシリーズは、360/180のハイブリッド型である初代QooCamの発売以来、QooCam Lite、QooCam 8K、QooCam 8K Enterprise、QooCam FUN、QooCam EGOと様々な機種が登場しているが、今回の製品は、パノラマ(360°)カメラとしての3世代目という意味で、「3」という名が付けられている。最大5.7K 25/30fps、4K 30/50/60fpsの360°動画、最大11Kの360°静止画が撮影可能だ。光学系は、1/1.55型のイメージセンサーを2基搭載、レンズは絞りF1.6となっており、暗所の撮影性能も期待できる。1.9インチの液晶タッチスクリーンを実装、直感的な操作と撮影前後の画像の確認が可能となっている。
QooCam 3は、シリーズ初のアクションカメラとして位置付けられており、ハウジングなしで水深最大約33フィート(10m)までのIP68の防水性能を備え、安定化の実現のために、6軸ジャイロセンサー(IMU)が搭載されている。また、筐体の4面に4つのマイクを内蔵し、360°の空間音声に対応、臨場感のあるVR映像が記録できる。物理ボタンは、上面に電源ボタンとモード切り替えボタンが配置されている。ディスプレイの表示からは、AirPodsの対応が伺える。側面には、1630mAhの交換バッテリーのスロットがある。
カメラ本体による直感的な操作の他、モバイルデバイスのQooCamアプリに接続して利用した場合、カメラのリモートコントロールや手ブレ補正(Super Steady)の適用、スマホ内の動画編集、SNSへのシェア、ライブ配信などを、スマートに行うことができる。
解像度等のスペックにおいては、競合機とほぼ同等であるが、レンズの明るさやイメージセンサーのサイズにおいて、他機種よりアップグレードが図られている。筆者は実際に一度、評価機を目にしているのだが、デザインはGoProの360°アクションカメラ「MAX」に似ている印象だ。その理由については、内部に強力な画像処理システムを配置して、アクションカムとしての設計を突き詰めた結果、スクエアな外観とオフセットな2眼のレンズのレイアウトに行きつき、デザインの選択肢は限定されたとのことだった。ストレートな光学系は、プリズム等を利用していない分、入射光をより有効に利用できるから、明るいレンズやイメージセンサーのサイズと相まって、画質面には期待ができると考えている。QooCam 3の詳細なスペックは、以下を参照されたい。
QooCam 3の仕様
静止画解像度 | 62MP(11K) |
開放絞り | F1.6 |
イメージセンサーのサイズ | 1/1.55 |
動画解像度 | 5.7K @25/30FPS4K @30/50/60FPS |
ISO | 100-6400 |
シャッタースピード | 1s-1/6400s |
EV | ±2EV |
ホワイトバランス | Auto |
マイク | 4 |
スピーカー | 1 |
ジャイロ | 6軸 |
防水性能 | IP68、最大33フィート(10m) |
重量 | 201グラム |
タッチスクリーン | 1.9inches |
バッテリー | 1630mAh |
※実際の仕様は、公式発表後に変更される可能性がある。
QooCam 3 Ultraについて
QooCam 3 Ultraは、CES 2023のKandaoブースにおいて、モックアップの展示と会場のPOPに基本的なスペック等が掲示されたのみで、まだ原稿執筆時点の2023年1月末時点においても、プレスリリースなどは配信されていない。「Ultra」というネーミングからもわかる通り、QooCam 3の上位機種として位置付けられたモデルとなっている。
撮影性能は、360°動画が最大8K 24/25/30fps、5.7K 50/60fps、360°静止画が最大14Kである。光学系は、1/1.7型のイメージセンサーを2基搭載、レンズは絞りF1.6。スペックは、現存する競合機を上回り、まさしくQooCam8Kの後継機ともいえるが、異なる点としては、QooCam 3同様アクションカメラとしての商品企画となっているところだろう。水深最大約33フィート(10m)までのIP68の防水性能を備えている点や、4つのマイクと1つのスピーカーを内蔵して空間音声に対応している部分は、QooCam3と同様である。液晶タッチスクリーンは、QooCam 3より若干大きめの2.2インチを採用しており、その分、縦長な形状となっている。入手した製品写真からは、本体の正面にシャッターボタン、レンズ切り替えボタン、プリセットボタンが観察できる。筐体の側面には、電源ボタンとモード切り替えボタン、USBタイプCのポートが、反対側には、2500mAhの交換バッテリーのスロットが配置されている。
色深度は、QooCam 3の8bitに対して、QooCam 3 Ultraは、10bitとなっている。フレームレートは、24fpsの選択肢が可能で、シネマライクな撮影を可能にしている。GPSに対応している点についても、見逃せない。
現在までに判明しているQooCam 3 Ultraの詳細なスペックは、以下を参照されたい。
QooCam 3 Ultraの仕様
カメラ内ステッチ | カメラ内リアルタイムステッチ対応 |
ジャイロ | 6軸 |
開放絞り | F1.6 |
ISO | 100-6400 |
シャッター | 60s-1/6400s |
動画解像度 | 8K@24/25/30FPS5.7K@50/60FPS |
静止画解像度 | 14K8K |
動画コーデック | H.265 |
イメージセンサーのサイズ | 1/1.7 |
単体のレンズのFOV | 200° |
内蔵ストレージの容量 | 128GB |
タッチスクリーンのサイズ | 2.2inch |
対応するSDカードの最大容量 | 1TB |
Battery容量 | 2500mAh |
Bluetoothマイク | 対応 |
防水性能 | IP68、最大33フィート(10m) |
GPS | 対応 |
WI-FI | WI-FI 6 |
※実際の仕様は、公式発表後に変更される可能性がある。
Meeting Ultraについて
Meetingシリーズは、Kandaoの360°や180°VRカメラのノウハウを、オールインワン会議カメラシステムに落とし込んだ製品として登場しており、初代Meetingをはじめ、Meeting Pro、Meeting Sなどのラインナップがある。今回のMeeting Ultraは、2つの魚眼レンズで得られる360°の4K 30fpsHDRビデオ品質の向上と共に、2つの傾斜可能な15.6インチの大型のフルHDタッチスクリーンが取り付けられたことが大きな特徴だ。リモートの参加者を表示するための2台のディスプレイが追加されたことで、ユーザーはカメラとディスプレイを同時に見ることができ、顔を外部モニターに向ける必要がなくなった。会議室やリモートの参加者に対して、常に顔の正面を見せることができるようになったという訳だ。
360°ビデオキャプチャ用の2つの魚眼レンズ、最大18フィート(およそ5.5m)以内の音声を拾う8つの無指向性マイクとHiFiスピーカーを内蔵。Android OSを実装し、スタンドアローンのビデオ会議端末として利用できるほか、USBデバイスとしてコンピューターや任意のモニター等に直接接続することも可能だ。
本体には、最大2台の外部ディスプレイ画面をサポートする2つのHDMI出力ポートと、コンピューターの画面を2つの接続されたディスプレイで直接共有するためのHDMI入力ポートが配置されている。Miracast機能によるスクリーンミラーリングを介して、画面を共有することもできる。その他、有線接続用のイーサネットポート、キーボードとマウスを接続するための3つのUSB Aポート、周辺機器(追加のカメラやマイク、あるいはスピーカー)用のUSB Cポート、および会議を記録するためのSDカードスロット等があり、拡張性に優れている。
接続オプションには、5Gホットスポット、Wi-Fiネットワーク、LANが含まれており、インターネット環境さえあれば、ユーザーはMeeting Ultra単体でどこでもリモート会議を行うことができる。そして、Zoom、Microsoft Teams、Google Meet、Slack、およびCisco Webex Meetings等の主要なビデオ会議プラットフォームと互換性がある。
AIアルゴリズム3.0とスマートトラッキングにより、活発に発言している人物を、15°の範囲で正確にローカライズして、自動フレーミングすることができる。アクティブなスピーカーは、ビデオとオーディオにおいて、常に強調表示されて、リモート参加者の中心に置かれる。
カメラの前に表示したいものがある場合、視野を調整およびロックして、ズームインまたはズームアウトして、強調することができる。また、カメラからの映像を上下反転できるから、天井から吊り下げて設置することも可能となっている。
まとめ
QooCam 3は、Kandaoとしては、初めてのアクションカムへのアプローチとなる360度カメラだ。解像度等のスペックは、競合機と同等程度の落とし所になっているが、光学系には期待ができそうだ。映りと使い勝手の良い360°アクションカムの仕上がりを期待する。アクションカムならではの多様なアクセサリーの開発にも注目したい。QooCam 3の正式な発表は、春頃に予定されている。
QooCam 3 Ultraは、コンシューマー系のVRカメラとしては、スペックも最大級であり、プロユースも想定される。プロVRカメラのサブ機としての利用や、大型のカメラでは撮りにくい場面で、威力を発揮してくれることを期待したい。一方、高スペック故の発熱やその対策等に着目していきたい。QooCam 3やQooCam 3 Ultraの発売は、いずれも恐らく2023年の夏頃になる見込みだ。
Meeting Ultraは、CES 2023において、ベスト・オブ・イノベーション・アワードを受賞している。従来のMeetingシリーズを進化、発展させ、携帯性と拡張性を備えた360°会議カメラとなっていることが、その受賞理由だ。パソコンに接続せずとも、会議室の中央に配置して、すぐに利用でき、リモート会議のディスカッション、プレゼンテーションに最適である。最早一般的となったオンラインによるミーティングであるが、Meeting Ultraは、そのクオリティを一層高めてくれることが予想される。Meeting Ultraは、日本では春頃に発売が予定されている。
CES 2023のKandaoブースでは、この他、当連載記事でも取り上げてきた既発売の超ハイエンド機Obsidian Pro、3DガジェットカメラQooCam EGO、それから、自由視点撮影システム「AR Cam Free View」のデモが出展された。
自由視点映像技術については、複数台のカメラ(最低16台)により多視点の映像を取得、スマホのアプリを通じて、撮影をコントロールして、ライブストリーミング、録画、バレットタイムの制作、動画配信などの操作を⾏うシステムである。中国ではすでにサービスが開始されている模様で、日本では三友株式会社が取り扱う予定となっている。
今回、取り上げた製品やソリューションは、いずれも具体的な発売時期、販売価格は現時点では未定である(2023年1月の原稿執筆時点)。いずれ実機が入手でき次第、詳しく検証して、記事化したいと考えている。
自由視点撮影システム「AR Cam Free View」のサンプル動画