東京ドームシティ内に新たに7つの大型ビジョン群「東京ドームシティビジョンズ」が設置された。東京ドームシティは現在2024年にかけて大規模なリニューアル中で、来場者の非日常感の醸成や期待感の高揚、滞在快適性と回遊性の向上等を図り、「街」としての一体感と、より魅力的な空間の創出に、今回の東京ドームシティビジョンズがどう貢献しているのか現場で確認をしてきた。

東京ドームシティに向かう各駅からのアプローチ動線や、エリア内に新たに7箇所、既存のものも含めると10箇所になるだろうか。それぞれを見ていこう。各ビジョンの位置は全体配置図を参考にしていただきたい。

今回新たに設置されたビジョン

(1)25ゲート広場L型ビジョン

地下鉄後楽園駅よりの動線から視認できる大型LEDビジョンである。構造物として厚みもあり、非常に存在感のあるビジョンである。正面左側はL字型にディスプレイが設置されているので、錯視3Dによる表現も想定されているのかもしれない。

左側はL字にLEDが配置されている
L字部分は湾曲処理。ドットピッチはさほど細かくはない
地下鉄後楽園駅からの連絡橋からもよく視認できる

(2)ラクーア広場ビジョン

こちらはノーマルな画角のビジョンである。

ノーマル画角

(3)プリズムホール塔体ビジョン

元々あったと思われる構造物の壁面に設置された縦型の大型ビジョン。輝度も解像度も日中の明るい環境でも十分視認可能だ。

プリズムホール塔体ビジョン

(4)黄色いビル天井リボンビジョン

最近増加しつつある天井面のディスプレイの事例がここでもまた一つ。天井全面にLEDを設置するのではなく、5本のスリット(リボンと表現している)化することでコストダウンとインパクトを両立させている。天井面を黒く塗装しているので、黒いキャンバスに5本のラインが走っている状態である。表示されるコンテンツもそれを意識したクリエイティブになっている。

この場所は水道橋駅から出入りするための狭い通路になっていて、黄色いビルへの入り口にもなっている。今回天井面のディスプレイに加えて、床面にも白いラインが引かれているので、実際にここを歩くと黄色いビルへの入り口やATMがわかりにくい。黄色いビルへのアクセスに影響がないのか若干気になった。ここは閉鎖空間になるので、音を効果的に使えそうである。

黄色いビル天井リボンビジョン

(5)アベニューイベントビジョン

(6)アベニューAaMoビジョン

これらもノーマルな画角のビジョン。反対側のアベニュースーパーリボンビジョンと連動している。

左がアベニューイベントビジョン、アベニューAaMoビジョンはその奥(写真中央辺り)に設置されている

(7)アベニュースーパーリボンビジョン

全長122mにわたる幅が狭いリボン状で、L字に設置されたディスプレイ。上下方向が極端に狭いので、これに対応したクリエイティブが施されている。

アベニュースーパーリボンビジョン

従来から設置されていたもの

(A)水道橋駅から一番最初に見えるビジョン

(B)東京ドームのメインエントランスに設置された2本の円柱形も含めたビジョン

(C)イベント開催時に利用しやすそうな完全屋外型の大型なビジョン

新設された東京ドームシティビジョンズの配信システムの企画・開発やオペレーション設計、広告販売ソリューションについては、ジェイアール東日本企画(jeki)と行ったとのことだ。

実際に東京ドームシティエリア内を歩き回ってみたが、10箇所に分散配置されたディスプレイは、大型であったり異型であったりして、従来のような縦または横に設置された16:9のLCDでは得ることができない視認性とインパクトがある。またモーショングラフィックスは効果的で目を引く。

アベニュースーパーリボンビジョンに表示されるモーショングラフィックス

その時点で開催されているイベントに関しての情報提供のクリエイティブは、モーショングラフィックスと比較して情報を詰め込みすぎている感は否めないので、ここは思い切った削ぎ落としをした方が効果が高いのではないだろうか。またほとんどの場所が完全屋外なので音が完全に発散してしまい、音はほとんど聞こえないか意識できない。これ以上音量を上げたり、スピーカーの数を増やせば聞かせることはできるとは思うが、それが正しいのかは疑問が残る。音に関してはタイミングや音量にもっとメリハリを付けた運用にしたらいいのではないだろうか。

東京ドームシティは、複数の施設の集合体であり、全体として壁がなく出入り口も存在していない街、街区である。そのために元々は結構ばらばらで散らかった感じがあった「後楽園ゆうえんち」であったが、現在進行中のリニューアルと、今回のデジタルサイネージである「東京ドームシティビジョンズ」で街としての統一感、アイデンティティーの訴求はかなり確立できているのではないかと感じた。サイネージを利用したこういった試みの中では、もっともうまく実現できている事例のように思う。それは前述した通り、LEDによる大画面や異型化の成果であることは間違いない。同じディスプレイで統一するという方向性とは異なるやり方も、確実に有効であることがよくわかる事例である。

WRITER PROFILE

江口靖二

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。