富士フイルム GX645AF + Phase One P25[中判カメラANTHOLOGY] Vol.14説明写真

今回取り上げるのは、富士フイルムGX645AFボディにフェーズワンのデジタルバックP25のセットとなる。『Phase One P25』はコダック製CCDセンサーを搭載。後期型のP25+とは発色が違うと言われており、この写りを検証するのが筆者の使命なのである。

FUJIFILM GX645AF

富士フイルムGX645AFは、ハッセルブラッドと共同開発した「Hシステム」のカメラであり、本機とハッセルブラッドH1は同じものである。富士フイルム銘のものはすでに修理受付が終了しているが、H1/H2と同じく、各社のHマウント用デジタルバックや、フィルムバックにも対応している。

お借りしたレンズはHC100mm f2.2、HC35mm f3.5の2本。この組み合わせは筆者のお気に入りだ。

Phase One P25

GX645AF + P25 説明写真

2005年に発売された『Phase One P25』は、2200万画素、16bit記録のコダック製CCDセンサーを採用したデジタルバックだ。センサーサイズは48×36mm。135判フルサイズを2枚並べた大きさであり、645フルフレームセンサーが登場するまでは上位機種としてラインナップされていた。現在主流の中判44×33センサーよりも一回り大きいのがポイントだ。

2200万画素という画素数は、発売当時はともかく今となっては物足りない気もするが、実際のところほとんどの用途で実用十分だろう。しっかりと中判のポテンシャルを体感できる。

一般的に中判CCDセンサーはISO 50~100あたりで最高画質が得られ、高感度には弱いのが定説である。本機も同様で、ISO200までがギリギリ実用範囲という感覚だ。

18年前のデジタルバック

GX645AF + P25 説明写真

フェーズワンPシリーズは、パソコンに繋がずカメラ単体で撮影可能な最初の機種で、今回のようにハッセルブラッド Hマウントだけでなく、マミヤやコンタックス用にもラインナップされていた。

Pシリーズには大きく分けて3つの世代があり、コダックセンサー搭載の「初期型Pシリーズ(本機はここに該当)」、コダックセンサーのまま発色がマイルドになりブラッシュアップされた「P+シリーズ」。そしてダルサ製センサーを採用した「新しいP+シリーズ」である。キャプチャーレートや高感度耐性など細かい違いはあるが(今回は割愛)基本的にはCFカードに記録し、テザー撮影はFireWire400で行う共通仕様。筐体デザインも操作性も同じだ。バック本体に冷却ファンなどの可動部がないせいか、発売から相当時間が経っているにも関わらず、現在でも元気に動いている個体が多いと感じる。

筆者も最近までダルサ製センサーを搭載したP65+を使用していたが、日付が保持できなくなるトラブルを除けば、実用上しっかり働いてくれていた。落として衝撃を加えたりしなければ、まだまだ使えるものだと思う。ただし、機械はいつか必ず壊れるもの。その場合の出費は相当なものになるので、知識のない方が気軽に手を出すのはオススメしない。

GX645AFの使用感

GX645AF + P25 説明写真

筆者がGX645AFを使用するのは今回が初めてである。この連載で取り上げたことのあるハッセルブラッドH6Dや、個人的にお借りしたH5Xらとデザイン自体はほとんど変わっていないようだ。もちろん、こちらが元祖となる。

見た目のデザインだけでなく、使用感も後継のHシステムボディと似ていて、DNAを色濃く感じる。手持ち撮影ではブレやすい面もあるが、カツンとキレのあるシャッターは撮っていて実に気持ちがいい。

細かい違いを挙げるならば、旧型ファインダーの見え方にはやはり時代を感じるものがある。像は大きく見やすいものの、目の位置が少しでもズレるとケラれてしまったり、ファインダー上で色収差が見えることも多々あった(現行機の新型ファインダーユニットを装着すれば解決してしまうのは素晴らしい)。AFの挙動に関してもH6Dと比べると頼りなく感じる部分はあるが、ピント精度は悪くないし、大きく外すこともない堅実なものだ。

試写(HC 100mm F2.2)

HC100mmは、言うまでもなくF2.2という明るさがウリのレンズだ。P25デジタルバック(48×36mm)で使用する場合、135判換算で72mm相当の中望遠レンズとなる。比較的やわらかな写りで、本来ならば人物の撮影で活躍するレンズである。

Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 50 1/250 s f/7.1
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Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 50 1/250 s f/4 / 花が散ったあとの蓮台
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Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 100 1/250 s f/2.2
ほとんどの花が落ちてしまっていたが、まだ蓮のつぼみがあるのを発見。
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絞り開放、最短の90cm付近まで寄って撮影した蓮のつぼみ。寄りきれずボケが大きいという印象はないが、レンズの焦点距離によって被写界深度は浅くなる。何枚も撮ってやっとピントがきたが、普段なら2段は絞りたいところだ。

Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 100 1/250 s f/5.6
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Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 50 1/250 s f/5.6
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Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 100 1/250 s f/5.6
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試写(HC 35mm F3.5)

HC35mmは良く写る超広角レンズで、P25デジタルバックでは135判換算で25mm相当の画角となる。レンズシャッターが内蔵されているとはいえフィルター径95mmの大きなレンズだ。

Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 35mm F3.5 / ISO 100 1/250 s f/7.1
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Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 35mm F3.5 / ISO 50 1/250 s f/5.6 / 太陽の部分にスミアが発生している
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検証結果

コダック製で濃厚な色を出すと言われるP25の個性を楽しみにしていたのだが、実際に使ってみると思いの外マイルドで扱いやすいものであった。

Phase One P25の色

Phase One P25 作例
FUJIFILM GX645AF + Phase One P25 / HC 100mm F2.2 / ISO 100 1/250 s f/5.6

こちらは順光での撮って出しデータだが、他の中判CCD機と比べて「撮って出し」の色乗りが良いという意味であれば、その傾向はあるかもしれない。RAW現像で調整するというよりも、ポジフィルムのような発色を目指していたのではないかと想像する。しかし他機種を用いRAW現像したものと比べて、特に個性があるとか、優れた発色という印象もない。青と緑の発色が強めなのも、メーカーの画づくりの範疇と言えそうだ。

メーカーの色に左右されず、自分の作風に合わせたい場合は、このポジライクな発色が邪魔になることもあるだろう。コダックCCDは中判以外でも経験しているためか、語弊を恐れずに言えば、体験したことのある「ごく普通の」写り、どこか懐かしい色の出方といった印象である。最近写真を始めた人には逆に新鮮な部分はあるかもしれない。

スミアの発生率

スミア発生
逆光時に発生するスミア。ここまで極端なのは初めて見た(通常は線が入る程度)。

P25を使っていく中で驚いたのは「スミア」の発生率である。強い光源を入れると高確率で発生した(上のHC35mmの作例でも発生している)。ダルサCCDではこれほどのスミアにお目にかかった記憶がなく(発生は希だ)、少なくとも逆光や太陽を入れた風景写真には不向きと言えるだろう。もし、これから実用を前提に考えるのなら、ここが一番のネックとなるかもしれない。蛇足だが、ペンタックス645Dに搭載されたコダックCCDではスミアを意識せずに使えていたので、恐らく後期型のコダックCCDではある程度改善されているのでは、と考えている。

また、中判の低画素機で問題となりやすいのがモアレである。今回の作例では発生していないが、レンズの解像度がセンサーの画素数を上回ると発生するため、スタジオで洋服や特定のパターンを撮る用途には向かない側面もある(現像ソフトCapture Oneの進化で、モアレが目立ちにくく対処も簡単にはなっている)。

おすすめポイント

左:撮って出しデータ / 右:ハイライト調整
※16bit CCDのダイナミックレンジ(調整してもワザとらしさは皆無だ)

中判デジタルバックといえば、何と言っても16bit記録によるデータの豊潤さが大きな特長である。レタッチ耐性とトーンの美しさは現在のミラーレス機を凌ぐ部分があるし、話題の44×33よりも大きいセンサーのため、使うレンズの焦点距離が異なり、物理的に『ひと味違う』写りになるのは他の大型センサー機と同様だ。

スミアが出やすかったり、低画素ゆえモアレが発生しやすい欠点もあるが、ISO200を上限とし、趣味として割り切って「写真」を楽しめる人にはマッチする組み合わせだと思う。フィルム価格の高騰が続く中、フィルムカメラを使う感覚でたくさん写真を撮る人ならば、あっという間に元が取れることだろう。


富永 秀和|プロフィール
1983年福岡生まれ。グラフィックデザイナーから転身した職業フォトグラファー。2013年に中古購入した中判デジタルでその表現力の虜となる。福岡のシェアスタジオで経験を積み2022年に上京。
総合格闘技(MMA)ファン。
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