Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

この連載「中判カメラANTHOLOGY」で取り上げる中判デジタル機としては最も古い機種となる、イマコン製デジタルバック「imacon ixpress 132c」をご紹介したい。使用するカメラボディは、なんとマミヤ645 PROである。

imaconとは

イマコンはデンマークの大手スキャナー及びデジタルバックメーカーで、2004年にハッセルブラッドの親会社であったシュリロによって買収され、ハッセルブラッドに統合された。

ハッセルブラッドのデジタル部分は実質イマコンであり、RAWデータの拡張子「fff」ファイルは元々はイマコンが採用していたRAWファイル形式である。また、有名なハッセルブラッドの高級フィルムスキャナー「Flextight」も元々はイマコンの製品となっている。

imacon ixpress 132c

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

今回使用するデジタルバックは「imacon ixpress 132c」。パソコン接続が必須の時代から、スタンドアローンへ移行する過渡期の製品で、イメージバンクと呼ばれるHDD内蔵機器にNP-Fバッテリーを装着し、そちらから電源供給、HDD内にデータを記録する仕組みだ。

センサーサイズは大型の48×36mm。2200万画素、16bit記録のコダック製CCDセンサーを採用しており、現在主流の中判デジタルよりも大きいのが特長だ。2003年の発売当時は400万円以上した業務機である。

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

132Cのように機種名に「C」のついたモデルは、背面にカラー液晶が搭載されている。発売時期を考えると当然ではあるが、液晶で露出やピントを正確に確認するのは難しく、屋外ではさらに見づらくなってしまう。

それでもカラーで写真を確認できるのは非常に心強い。ないよりは良いのだ。常にイメージバンクとの接続が必要という煩わしさはあるものの、普通のカメラと同じ感覚で撮影できるのは、実用性をぐんと引き上げてくれる。

Image Bank

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

先に触れたように、イメージバンクと呼ばれる専用のHDD内蔵機器を通して、電源の供給からデータ保存までを行う。バックとの接続はワンタッチ接続のケーブル1本だけ。実にシンプルだ。

撮影データの取り込み、及びテザー撮影に関しては、FireWire接続が必須となる。ただイメージバンクを繋ぐだけではパソコン側でHDDとして認識されないので注意が必要だ。

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真
FlexColorのインポート画面

ソフトウェアは「FlexColor」を使用する(ハッセルブラッドのサイトからダウンロード可能、必ず対応OSを確認してほしい)。イメージバンクを接続するとFlexColor上で自動的にデータが読み込まれ、テザー撮影も可能になる。ただし元々スキャナー用のソフトのため連続した写真を処理するのには向いていない。画像を取り込んだらハッセルブラッド純正の「Phocus」など、他のソフトで現像処理を行うのが良いだろう。

古いバージョンのPhocusでもデータ取り込みが可能だと聞いたが、筆者が試した環境では上手くいかなかった。FireWire問題も含め、最新のパソコンではデータ取り込みすらできない点で、逆に敷居が高いと言えるかもしれない。

Mamiya 645 PRO

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

カメラは名機マミヤ645 PRO。この機種のデジタル化について、Web上で情報は見つけられなかった。マミヤはデジタル対応の「645AF Dシステム」を発売していたが、AF化に伴い定評のあったマミヤ645のレンズで自動絞りが効かなくなるなどし、本機645PROを使いつづけるユーザーも多かったという。

イマコンのデジタルバックは、マウント部分が交換式になっており、マミヤ用のアダプタープレートさえあれば使用可能なのだ(そしてこんなものが用意できるPRONEWS編集部、恐るべし!)。シャッターの同調はアダプタープレートから伸びるコネクターを、電磁レリーズ用のソケットに差し込むことでクリアしている。

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

情報量が多くて申し訳ないのだが、今回使用する645 PROは、マミヤ645シリーズ20周年モデルの「Mamiya 645 SV PACK(スーパー・バリュー・パック)」だ。軽量なファインダーとコンパクトなワインダーグリップを組み合わせたコストダウンモデルである。

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

特段珍しいという訳でもないが、この645 SVボディにイマコンのデジタルバックを装着しているユーザーは、世界中探してもレアな存在ではないだろうか。

撮影サンプル

カメラバッグにHDD内蔵のイメージバンクを入れ、ぶらりとスナップする流れで試写を楽しんだ。久々にスプリット・スクリーンでピントを合わせシャッターを切る。シャッターと同時に電動の巻き上げ音が響くのは、デジタルなのに何処か新鮮な感覚である。

今回の試写には、手持ちの古いマミヤ645レンズを使用した。絞りやSS等、カメラ側の設定は撮影データに記録されていないため(筆者も記憶していないため)省かせていただくが、絞りはF5.6~F9辺り。ISO感度は50もしくは100で撮影している。

imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C 110mm F2.8
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imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C 110mm F2.8
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imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C 110mm F2.8
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imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C 110mm F2.8
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imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C 110mm F2.8
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空の写真を見ると、全体に小さな黒いツブが写り込んでいるのが分かる。これはCCDセンサー前面にあるIRカットフィルターのコーティングが傷んでいるせいだと思われる。かつてライカM9を使っていたときに同じ症状を経験したのでピンときた。

imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C MACRO 80mm F4 N
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imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / MAMIYA SEKOR C MACRO 80mm F4 N
80mmマクロはカリッとシャープに写る。
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まとめ

imacon ixpress 132c 作例
imacon ixpress 132c / NMAMIYA SEKOR C 80mm F1.9 N / ISO 100 1/60 s f/1.9
つい先日3階窓から脱走して騒ぎを起こした茶々殿。
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写真を仕事にしていると忘れがちな「撮ること自体が楽しい」という感覚。カメラバッグ内で年代物のHDDが回っていると考えると気が気でないし、どんな写真が撮れているのか液晶ではボンヤリとしか判別できないなど、ある意味でフィルムカメラ以上の不便がある中で、自分が楽しいと感じたことが新鮮であった。

帰宅してFlexColorでデータを読み込む。IRフィルター劣化のためブツブツが写っていたり、マゼンタ被りしたデータではあるが、簡単に調整していくだけで、画像データというよりも「写真」が浮かび上がる。

等倍で見るとしっかりシャープで、アウトフォーカス部分にも程よく味がある。現代のカメラのようにギスギスしていないし、写りすぎない。撮影時の不便さもあってか、初めて中判フィルムを使ったときの感覚が蘇ってくる。

また、マミヤボディはカメラブレが少ない傾向があり、この645 PROも例外ではなかった。110mmレンズで1/60sあたりを多用したが、ピントが外れたカットは量産したものの、試写の範囲内でブレた写真は1枚もなかった。

褒めちぎっているように感じるかもしれないが、もちろん他人に気軽にオススメできるようなものではない。突然シャッターが連動しなくなることもあり、その時はどうにもならず退散するしかなかった(今では対処法が分かるが、写真が撮れなければただの重りである)。

筆者は気に入った道具が数台あれば良いタイプなので、仮にマミヤ645 PRO用のアダプターが奇跡的に手に入ったとしても、自分で購入するかと言われたら躊躇してしまう。だがとにかく楽しいカメラなのだ。もし購入するならば、カメラ単体でCFカードに撮影できる48×36mmのイマコンを探すことだろう。

おまけ

Mamiya 645Pro imacon ixpress 132c 説明写真

今回使用したデジタルバックではIRカットフィルターのコーティング劣化により明るい部分に小さなツブが発生しているが、なんと「hasselbladrepair.com」にて現在でも修理交換が可能だ。ハッセル公式ではないようだが、イマコンにゆかりある業者のようである。発売から20年経ってなお修理が可能とは驚くしかないし、値段もお手頃で背中を押されるような気がしないでもない。


富永 秀和|プロフィール
1983年福岡生まれ。グラフィックデザイナーから転身した職業フォトグラファー。2013年に中古購入した中判デジタルでその表現力の虜となる。福岡のシェアスタジオで経験を積み2022年に上京。
総合格闘技(MMA)ファン。
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