ソニーグループ各社が協同で新たに立ち上げた写真&映像アワード「THE NEW CREATORS」は、次世代のクリエイターを発掘し、その才能を共に創り上げていくプラットフォームである。今回が第1回目の開催となるこのアワードは、新たなクリエイティブの可能性を広げる場として期待を集めている。

写真作品と映像作品それぞれ3部門ずつ設け、プロ・アマチュアを問わず幅広い参加者を募集する本アワードは、若手クリエイターや短編作品に挑戦しやすい部門を設け、多様な表現を評価する姿勢が特徴だ。

クリエイターにとってアワードは、「登竜門」とも言われる存在だ。自身の作品がどのように評価されるか、不安や期待が入り交じる挑戦の場でもある。しかし、アワード参加がその後の活動に大きなチャンスや成長をもたらすことも事実だ。

今回、本記事では、第16回TOHOシネマズ学生映画祭ショートフィルム部門でグランプリを受賞した宮島遥夏氏に、アワードに挑戦する意義やその影響について詳しく話を伺った。

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宮島 遥夏(みやじま はるか)氏 プロフィール

埼玉県生まれ。
埼玉県立芸術総合高等学校 映像芸術科へ入学後、写真および映像知識を学ぶ。

日本大学芸術学部 映画学科 撮影録音コースへ進学・卒業。
在学中にもCM、MV、ドラマ、映画の現場に撮影部として参加し、そのおもしろさにのめり込んでいく。

卒業制作のショートフィルム「まる」は第16回TOHOシネマズ学生映画祭ショートフィルム部門 グランプリをはじめ、さまざまな賞を受賞。
現在はCM、MVをメインとして日々活動しており、2025年独立予定。

Instagram: @miyazi_ne

映画祭参加の経緯

自己紹介をお願いします

宮島氏:

高校時代は映像系の学科に在籍しており、映画や写真の現場を見学させていただく機会に恵まれ、「撮影」に触れてきました。その後、日本大学芸術学部映画学科に進学し、在学中はショートフィルムの制作や、自らカメラを回す機会が増えました。
現在は撮影監督として、CMやMVの撮影を中心に活動しています。

「第16回TOHOシネマズ学生映画祭」に参加したきっかけは何ですか?

宮島氏:

卒業制作として「まる」というショートフィルムを作りました。私は作品を撮るうえで、「観ていただいた人に何かを届けたい」ということを大切にしています。
卒業後の1年間、この作品を多くの人に届けたいという思いで映画祭への出品を続けていました。「TOHOシネマズ学生映画祭」を知ったのは、ちょうど活動を始めたタイミングで「ここからスタートしよう」と考え、応募を決めました。結果として、多くの方に観てもらえたことが本当に嬉しかったです。
振り返ってみると、この決断が私の今の活動につながる大切なきっかけになったと感じています。

ショートフィルム「まる」について

ショートフィルム「まる」ティーザー映像。出典:TOHOシネマズ学生映画祭【公式】YouTubeチャンネル

「まる」という作品のテーマや意図について教えてください

宮島氏:

ショートフィルム「まる」は、「見た人が自分自身を優しく受け入れるような気持ちになれる作品を作りたい」という思いから制作しました。
私たちの身の回りには、いろいろな「まる」がありますよね。成績表のまるや作文のまる印のように目立つものもあれば、日常で見過ごしている「まる」もたくさんあると思うんです。それらの「まる」は、評価や成功を象徴しているように見えますが、実際にはその裏にもっとたくさんの価値や可能性が広がっているのではないかと考えました。
例えば、地球もまるいですし、宇宙だって「まる」の形かもしれません。そんな「まる」に象徴されるように、私たちが持っている価値観や枠を広げて、「今の自分でいい」と思える瞬間を増やしていけたらいいな、という願いを込めました。この作品が、そのような視点を届けるきっかけになれば嬉しいです。

制作中に特に大切にしたポイントや苦労した点はありますか?

宮島氏:

アスペクト比1:1.44にこだわったのが特徴です。これは小学校時代に使っていた原稿用紙のマス目を基にしていて、「一文字一文字を丁寧に書くように、1コマ1コマ映像を丁寧に作りたい」という気持ちで設定しました。
また、スタッフの役割分担が非常に難しかったです。卒業制作のルール上、専任スタッフが必要ですが、監督予定のメンバーが卒業のタイミングで正式参加できなくなり、私が監督と撮影を兼任する形になりました。それでも、チーム全員で「絶対に完成させよう」という思いで取り組み、なんとか乗り越えました。この経験を通じて「全員で創り上げること」の大切さを改めて実感しました。

グランプリ受賞が与えた影響

ショートフィルム「まる」 撮影風景

グランプリ受賞時の感想を教えてください

宮島氏:

「まる」は「TOHOシネマズ学生映画祭」で初めて上映された作品だったので、受賞はまさに予想外でした。観客の方々が真剣に作品に向き合ってくださり、上映後に感想を直接いただいたり、SNSでの反響を目にしたりしたとき、「自分たちの思いが届いたんだな」と実感しました。それが何よりも嬉しかったです。
グランプリを受賞した瞬間、チームメンバーと顔を見合わせ、「やった!」と喜び合ったのを覚えています。特に、苦しい時期を一緒に乗り越えたメンバーと共有できたことが、この経験をより特別なものにしてくれました。

周囲の反響やその後の展開について教えてください

宮島氏:

グランプリ受賞をきっかけに、他の映画祭や上映イベントにも声をかけていただきました。「まる」を観てくださった方々からの感想を聞くたびに、作品が人と人をつなぐきっかけになっていることを強く感じます。特に、あるイベントで「自分も同じような経験をした」と話してくださった方がいて、映画を通じた心の交流の素晴らしさを改めて実感しました。
また、業界関係者の方々とのつながりも広がりました。映像制作の現場で「TOHOシネマズ学生映画祭で受賞された方ですよね?」と声をかけていただき、そこから新しいプロジェクトが生まれたこともあります。この経験が、私にとって名刺代わりとなり、自信を持って活動する大きな支えになっています。

今後の活動と展望

今後挑戦してみたいことはありますか?

宮島氏:

撮影が大好きなので、まずは撮影監督としての技術をさらに磨きたいです。特に、光の使い方やカメラアングルで作品の感情をどう伝えるかを深く追求していきたいと思っています。
また、監督業にも興味がありますが、今はまだ撮影を通じてチーム全体をサポートする立場が自分に合っていると感じています。特に、異なるジャンルの映像制作(例えば、ドキュメンタリーやアニメーションの実写パート)にも挑戦し、幅広い経験を積みたいと考えています。
受賞をきっかけに自分の表現だけではなく、「観る人の視点を意識すること」の重要性を学びましたので、今後は観客の気持ちに寄り添った作品づくりを心がけたいです。

「THE NEW CREATORS」の魅力とは

ソニー「THE NEW CREATORS」アワードステートメント
※画像をクリックで、「THE NEW CREATORS」公式ページへ移動

「THE NEW CREATORS」に期待することや、その魅力についてどう思いますか?

宮島氏:

「THE NEW CREATORS」は初開催ということもあり、まだ評価基準や傾向が確立されていない分、自由な発想が活かされる場だと思います。どんな作品でも、作り手の「好き」がしっかり伝わるものは多くの人に届くはずです。その自由度の高さが、このアワードの最大の魅力だと感じています。
さらに、写真と映像の両部門が用意されているため、自分の得意分野を選びやすいのはもちろん、普段は挑戦しないジャンルに踏み込むチャンスにもなる。新しい自分を発見できる可能性がある点も面白いところですよね。

ソニーが主催するからこそ提供できる、このアワードの特別な価値は何だと思いますか?

宮島氏:

副賞の内容は、ソニー主催ならではの価値が詰まっていて、素直に言って羨ましくなるほど豪華だと思いました(笑)。
カメラやレンズの機材サポートや映画撮影現場の見学体験、アーティストのミュージックビデオ撮影体験など、ソニーグループだからこそ提供できる特別な機会があり、クリエイターにとってその後の作品づくりや活動に大きな刺激や良い影響を与えてくれる、素敵な内容だと感じました。

「THE NEW CREATORS」への参加を検討している方へのメッセージをお願いします

宮島氏:

アワードに出品するのは「怖い」と感じる人もいると思います。自分も最初はそうでした。落選したらどうしよう、評価されなかったらどうしよう、という不安がありました。でも、それ以上に「作品を通じて誰かとつながれるかもしれない」という期待感がありました。
だから、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。評価がどうであれ、自分の作品が誰かに届くかもしれない。その過程で得られるつながりや経験は、きっと次の挑戦を後押ししてくれると思います。

アワードへの参加がクリエイターの未来を切り拓く

宮島氏が卒業制作として取り組んだ「まる」は、「自分自身を優しく受け入れる」というメッセージが込められた作品であり、多くの人々とつながるきっかけを生み出した。

クリエイターにとって、作品を発表することは大きな勇気が必要である。しかし、挑戦することで新たな視点やチャンスが得られることを宮島氏の経験が示しているのではないだろうか。

ソニーの新たな写真&映像アワード「THE NEW CREATORS」も、そんなクリエイターたちの新たな可能性を広げる場として開催されている。自分の作品を世界に届けたい、評価を得たいと思う人には、この機会に挑戦してほしい。

ソニー 写真&映像アワード「THE NEW CREATORS」概要

  • 募集期間:2024年11月18日~2025年2月10日
  • 応募対象:プロ・アマチュア問わず、年齢や機材不問(スマホも可)
  • 審査員:
    写真作品
    石川 直樹(写真家)
    蜷川 実花(写真家、映画監督)

    映像作品
    上田 慎一郎(映画監督)
    大喜多 正毅(映像作家)
  • 部門:
      写真部門
      • ネイチャー部門:自然や風景などをテーマとした作品
      • 自由部門:被写体に制限なく、自由な発想を表現した作品
      • ユース部門:満25歳以下が対象
      映像部門
      • イマジネーション部門:VlogやMVなど自由な映像表現
      • ドキュメンタリー部門:取材や記録をもとに構成した作品
      • ショート部門:60秒以内の映像作品
  • 各賞・副賞:
    • 写真作品、映像作品ともに、グランプリ1名、優秀賞2名、入賞3名、佳作最大30名を選出し、入賞者には賞金と副賞を進呈。
    • 副賞はソニーグループならではの機材サポートやスタジオ見学など、特別な体験が得られる。