パスコミュニケーションのWebサイトより

先日大阪エリアのユニークなサイネージを何箇所か一気見する機会に恵まれた。どれもイマドキ風のものであり、そして全てがLEDビジョンであることも時代を強く表しているのではないだろうか。それではまずは梅田周辺の事例から紹介していきたい。

大阪でも増殖中の3Dサイネージ

新宿の3D猫以来、あちこちで見られるようになっている3Dサイネージが、新たに大阪に2箇所登場した。そのひとつはJR大阪駅の暁の広場のセントラルサウンドビジョンである。暁の広場というロケーション名にちなんで、アカツキと名付けられたヒョウが3Dで登場する。運用は3分ロールのうち30秒間の繰り返し放映だ。

このビジョンは他の多くの3D放映があるビジョンがL字に設置されているのに対して、ごく普通の平面設置である。そのため錯視的には立体感を感じにくい。また、猫や犬に比較してヒョウというキャラクター設定は正直弱い。本稿でも新宿の猫の例で述べたが、犬・猫という鉄板コンテンツを避ける必要は特にないと思う。なおこのビジョンは普通にiPhoneなどで撮影してもモアレは出ない。

セントラルサウンドビジョン

ここからさほど離れてはいない場所に、今月梅田BS3Dビジョンが稼働した。こちらは104m2のL字型大型ビジョンである。JR大阪駅と阪急梅田駅を繋ぐペデストリアンデッキから視認可能だ。パス・コミュニケーションズが管理・運用する媒体でLIVE BOARD マーケットプレイスに接続し、デジタルOOHのインプレッション(広告視認者数)に基づく広告配信を行っている。

梅田BS3Dビジョンの「ウメダのウドンチャン」

このビジョンの3Dキャラクターはかなりユニークで、「ウメダのウドンチャン」という、まさかの「うどん」がキャラクターなのだ。犬・猫ではなくいきなりうどんというのは大阪ならではということなのだろうか。

ビジョン稼働開始が1月16日で、現地に行ったのが21日、本稿執筆が24日であるが、SNS上には関係者以外のウドンチャンに関する投稿はあまり見ることができない。ビューポイント(立体的に見えるスイートスポット)までの距離が新宿などと比較して遠いのと、3D素材の放映頻度がやや低いので現場にいると気がつかない人も少なくないのがわかる。

あとは初見で見てウドンキャラということが理解できない部分もあるだろう。なかなか攻めたキャラクター設定だと思うが、今後の展開次第であろう。なおこのビジョンは普通にスマホで撮影すると盛大にモアレが出るのも惜しい。

こうした3Dコンテンツは何のためにやるのか。飽きない工夫をどうするかなどが今後問われるだろう。単に流行っているから話題になっているからでは、賞味期限はあっという間にやってくるだろう。特にキャラクターを設定する場合はこの点をしっかり設計して、ぜひとも長く継続できる物語性をクリエイティブに生かしてもらいたい。

大型商業施設のサイネージがなかなかユニーク

大阪駅のヨドバシカメラには、ユニークなビジョンが2箇所設置されている。ひとつは地下エントランスにあるLINKS UMEDAである。これはL字と円柱型に設置された2つのLEDビジョンである。空間の広さに対して画面サイズは非常に大きいのでかなりインパクトがある。立ち止まる場所ではないが視認性は抜群である。

地下エントランスのLINKS UMEDA

そして同じヨドバシカメラのもう一つの新規事例は、前述の梅田BS3Dビジョンのスイートスポットからヨドバシカメラに向かうペデストリアンデッキの正面に設置されたLEDビジョンである。大阪駅側からの動線になっていて、ここからの視認性もやはり抜群である。このロケーションの設置に関しては屋外広告物規制に対してどういう扱いなのかに関する情報を持ち合わせていないが、ここにも設置できるのかといった場所である。

2階部分のペデストリアンデッキ正面

このあと梅田から心斎橋に移動した。心斎橋PARCO地下2階の心斎橋ネオン食堂街の心斎橋PARCOビッグビジョンだ。湾曲したLEDビジョンは縦3m✕横12mで、地下の飲食店街の空間には不釣り合いなほどに大きなビジョンだ。この飲食店街は最近良く見かける、あえて昭和風の飲み屋街のような空間演出になっている。

通常は主にPARCOの自社情報を表示し、イベント開催時にはVJやDJによる演出用映像へと切り替えるようである。このビジョンの存在によって、心斎橋ネオン食堂街は食と酒、イベント開催や動画コンテンツ配信などが混在する、いい意味でカオスで新しい空間となっていた。普通のショッピングモールの大空間にある大型ビジョンとは似て非なるものなので、ここはぜひ現場でそれを感じていただきたい空間である。

心斎橋PARCOビッグビジョン

さて、そのショッピングモールの例としては万博記念公園に隣接する、ららぽーとEXPOCITYのLEDビジョンの施工設置方式がユニークだ。これはららぽーとEXPOCITYの中心部にある光の広場の吹き抜け大空間に設置された、透過型LEDビジョンによる2連大型デジタル懸垂幕である。1基の大きさは縦8m✕横2mで、透過型LEDビジョンを両面加工することで広場のどこからでも視認できる。またこのLEDビジョンは軽量なため、通常のLEDパネルでは難しいワイヤーによる大型の天吊りの懸垂幕なのである。こうした設置方法でこれだけの大きなサイズのビジョンが設置できるのであれば、こうした大空間でのデジタルサイネージ活用事例が一気に拡大していくのではないだろうか。

ららぽーとEXPOCITYのデジタル懸垂幕

ワイヤー4本で吊り下げている

今回の大阪の事例は、偶然だがすべてLEDビジョンである。こうした事例は16:9のLDCでは実現できないものばかりである。こうしたLEDビジョンによって、これまで媒介化できなかったロケーションにもスポットライトがどんどん当たっていくのではないだろうか。

WRITER PROFILE

江口靖二

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。