第1回「THE NEW CREATORS」映像作品 優秀賞を受賞した矼 由之輔氏(左)と上田 雄太氏(右)
ソニーグループが次世代の表現者を支援するために立ち上げた「THE NEW CREATORS」Photo & Movie Awards。
写真・映像の両分野を対象に、プロ・アマを問わず応募できる本アワードは、作品の評価に留まらず、受賞後の活動機会や機材サポートまで含めたクリエイターを支援する取り組みとして注目を集めている。
昨年度、初開催となった第1回では、多彩なバックグラウンドを持つ応募者が、自身の視点や価値観を写真・映像に落とし込んだ。その作品群からは個々のストーリーと時代性が交わり、アワードが担う役割の大きさを実感させられた。
そして現在、第2回となるアワードの募集が始まっている。
募集期間は2025年11月18日(火)~2026年3月16日(月)。写真3部門(ネイチャー/自由/組写真)と映像3部門(イマジネーション/ドキュメンタリー/ショート)という計6部門で構成されており、機材や経験の制限は一切ないオープンな間口が特徴だ。
グランプリ賞金100万円をはじめ、映画の特別試写会&トークセッションへの招待、先端技術を活用した制作機能を備えたスタジオの見学体験、ミュージックビデオなどの撮影体験、2年間のカメラ・レンズの機材サポート、ソニーイメージングギャラリー 銀座での作品展示など、ソニーグループの強みを活かした副賞が用意されている。
本記事では、第2回の募集も始まったところで、第1回 映像作品 優秀賞を受賞した上田雄太氏、矼由之輔氏の声を通じて、アワードが持つ価値と創作の現場に与えた影響を紐解いていく。

上田 雄太(ウエダ ユウタ)氏(映像作品 優秀賞)
1987年大阪生まれ。
警察官を目指し採用試験に挑むも15回全て不合格。その後心理学に関心を抱き、人の心に向き合う中で映像表現に出会う。2015年より制作会社でディレクターとして従事。
2019年、芸人の西野亮廣氏のサロン内コンペで最優秀映像作品に選出。以後西野氏の国内外の活動映像を担当。現在は(一社)ドローン撮影クリエイターズ協会代表理事としてドローン産業発展にも尽力。24年から大阪芸術大学非常勤講師として学生指導も行う。
矼 由之輔 (イシバシ ユウノスケ)氏(映像作品 優秀賞)
1996年6月26日生まれ。
武蔵野美術大学映像学科では写真を専攻し、その後の大学院では映像によるコミュニティデザインを研究。在籍時、友人の作品を動画化する体験がきっかけとなり、作家や職人、企業などの取り組みをビデオグラファーとして表現している。どこを切り抜いても印刷や展示等で写真として運用可能な動画表現を志向し、今後は全ての美大生に一つ以上の動画が持てる社会実現を目指す。
応募の理由と、作品に込めた想い

今回のアワードを知ったきっかけ、応募した理由を教えてください。
上田氏:
私はソニーのプロサポート会員として日頃から情報を受け取っており、昨年11月の案内メールでこのアワードの存在を知りました。
応募を決めた背景には、"幸せとは何か""心の豊かさとは何か"という、自身の中にあった問いがあります。
今回の作品は、中村さんという方の暮らしに興味を持ち、住所だけを頼りに現地に訪れたことから始まりました。便利な道具をほとんど使わない生活を実践されていて、所作や音、時間の流れに強く惹かれました。
現地で撮影の了承もいただき、生活の中にある動きや表情を丁寧に記録しながら、自分が感じた"豊かさ"を素直に映像に落とし込んでいきました。
上田氏の受賞作品
THE NEW CREATORS:第1回 優秀賞 受賞作品:ドキュメンタリー部門 「生き生きと。」
矼氏:
アワードを知ったのは、日頃からチェックしているコンペ情報の中で見つけたことがきっかけでした。「ソニーがこうしたアワードを主催する」という点に惹かれました。
今回の受賞作品「Seeking sign of soil」では、藍染めの布を土に埋めて制作する山田さんの作品に密着し、そのプロセスを映像化しました。
作品の魅力を最大限に可視化するため、必要最小限の素材で描くという手法を選び、インタビュー音声を使わず、環境音だけで構成する"語らないドキュメンタリー"という新しい表現に挑戦しました。
こうした手法によって"これまでにない表現を成し遂げたい"という思いが強くなり、その考え方がアワードの趣旨とも重なったことが、応募を決める大きな後押しになりました。
矼氏の受賞作品
THE NEW CREATORS:第1回 優秀賞 受賞作品:ドキュメンタリー部門 「Seeking sign of soil」
受賞を経て感じたこと

受賞が決まった時の心境や、周囲の反響について教えてください。
上田氏:
受賞の知らせをいただいた時は、本当に驚きました。自分が大切にしてきたテーマや視点が、第三者にしっかり届いたのだと実感できた瞬間でもありました。
SNSでの反応は想像以上に大きく、普段よりも多くの方からコメントやメッセージをいただきました。「ソニーのアワードで選ばれた」という事実が、名刺代わりのように伝わり、仕事の紹介や問い合わせにもつながっています。
周囲からは「作品を観て気持ちが軽くなった」「生活や働き方を見直すきっかけになった」といった声も多く、自分の中で抱えていたテーマが共感につながったことが嬉しかったです。
矼氏:
今回"語らない構成"のドキュメンタリーに挑戦していたこともあり、不安もありましたが、受賞できて素直に嬉しかったです。評価いただけたことで、自分の表現の方向性に自信が持てました。
特に印象的だったのは、副賞として受賞作品をソニーイメージングギャラリー 銀座で展示していただけたことです。
展示に来た方のコメントの中には海外からの来場者もいて、「作品が良かった」と書いてくださったのは大きな励みになりました。家族が展示を見に来てくれたことも、とても嬉しかったです。
受賞式や副賞での体験について、印象に残っていることはありますか?
矼氏:
副賞の内容が非常に実践的で印象に残っています。2年間のカメラ・レンズ機材サポートがあり、必要な機材をレンタルできるのは、現場に立つクリエイターにとって本当にありがたいです。
表彰式後の交流会では写真作品の受賞者とも話ができ、異なるバックグラウンドの作品に触れられたことが刺激になりました。また、審査員の方やソニー関係者とも作品について率直に意見交換ができ、視野が一気に広がった感覚がありました。
受賞を通して、「作品がどこで展示され、誰に届くか」を意識するようになり、自分の制作の立ち位置や、次に目指したい方向性がよりクリアになりました。
上田氏:
私が特に印象に残っているのは、副賞として参加させていただいたソニーPCL「清澄白河BASE」での見学体験会です。バーチャルプロダクションやCineAltaカメラ「VENICE 2」を使った撮影を実際に体験でき、普段の制作ではなかなか触れられない先端技術に間近で触れる機会になりました。
大型LEDを使ったスタジオでは、カメラの動きに合わせて背景の遠近感が変わる様子を目の当たりにし、「これをどう作品に生かせるだろう」と創作意欲が刺激されました。
スタッフの方々が技術の背景や撮影の工夫を丁寧に説明してくださり、制作プロセスにおける気づきが多かったです。単なる見学ではなく、自分の表現をどう広げられるかを考えられる体験だったと感じています。
今後について
今後の取り組みや作品展開はいかがでしょうか?
上田氏:
今回15分にまとめた作品とは別に、35分のバージョンがあり、これまでに3回上映会を行いました。上映の場で直接いただく感想がとても励みになりましたし、作品を通して人と人が触れ合う機会を今後もつくっていきたいと感じました。
今回の受賞は、自分にとっても大きな経験になり、作品をきっかけに広がっていくつながりの大切さをあらためて実感しています。

矼氏:
美大生の作品はもちろん、その誕生の過程には制作した本人の未来を激変する可能性があります。彼らの魅力をより多くの人へ届けるために、映像による発信力を持って作品を届ける場を創造し、見た人にも感動や影響を与えられるような美大生向けの映像プラットフォーム事業を進めています。
受賞後は予想以上に反響があり、撮影の依頼をいただいたり、展示の感想が広がったり、作品を外に出したことで見える景色が大きく変わりました。
応募を考えている方には、まず一度作品を外に出してみることをおすすめしたいです。締め切りがあることで作品を"終わらせる"きっかけにもなりますし、自分自身も今回その大切さを強く感じました。

まとめ
今回の取材を通して、「THE NEW CREATORS」が持つ意義をあらためて感じた。ソニーはこれまでもクリエイターに向けた優れた製品を提供してきたが、制作環境を支えるだけでなく、作品発表のきっかけや新しい表現への挑戦まで含めて後押ししていく姿勢が強く表れている。
応募の間口が広く、機材やジャンルの制限がない点も特徴である。プロ・アマ問わず参加できることで、表現の幅が限定されず、受賞者の言葉からも新たな挑戦を支える土壌になっていることが伝わってきた。
また、各副賞にはソニーグループならではの現場体験や展示機会が用意されており、単なる評価に留まらず、クリエイターが次の一歩を踏み出すための機会設計が行われている。作品を外に出したことで得られる反応や手応えが、次の制作へ向かう力になるという受賞者の言葉は象徴的だった。
第2回となる今回もそうした循環を生む場として、今後さらに重要な役割を果たしていくと感じている。
第2回「THE NEW CREATORS」開催概要
- 募集期間:2025年11月18日(火)〜2026年3月16日(月)
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募集部門(全6部門):
写真部門
ネイチャー / 自由 / 組写真(新設)
映像部門
イマジネーション / ドキュメンタリー / ショート
※複数部門応募可
※写真1部門5作品まで、映像1部門1作品まで - 応募資格:年齢・経験・使用機材不問(スマートフォン作品も応募可)
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審査員(五十音順・敬称略):
写真作品
川島小鳥 氏/志賀理江子 氏
映像作品
大喜多正毅 氏/大友啓史 氏 -
賞・副賞:
- 写真作品・映像作品ともに、グランプリ1名 / 優秀賞2名 / 入賞3名 / U25賞1名 / 佳作 最大30名 / ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞1名を選出
- 受賞者には賞金を進呈(グランプリは賞金100万円)
- 副賞として、ソニー製品の機材サポートやソニーイメージングギャラリー 銀座での作品展示、撮影現場見学や特別試写会など、ソニーグループならではの体験型副賞も提供
※ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞は、グランプリ、優秀賞、入賞のうち写真作品 1名/映像作品 1名を選定
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スケジュール:
- 一次審査(ショートリスト) 結果発表:2026年5月下旬
- 二次審査 結果発表:2026年7月中旬
- 表彰式・交流会:2026年9月下旬(都内で実施予定)
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主催:ソニーマーケティング
協力:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント / ソニー・ミュージックレーベルズ / ソニーPCL