今回はLG社製「40U990A-W」をレビューする。本機は40インチ近いサイズのウルトラワイドモニターで、黒の締まりや広色域を実現した「Nano IPS Black」を搭載。5K2K解像度のモニターはいくつか存在するものの、Thunderbolt 5対応となると2025年9月時点で唯一の選択肢となる。さらにUSBハブ機能やKVM機能も備え、制作環境に新たな可能性を広げる。
レビューにはM4 MAX搭載のMacBook Pro(CPU16/GPU40/4TB)を使用した。Thunderbolt 5ポートを備えることで40U990A-Wの性能を最大限に引き出すことができた。実際の使用感や計測結果を交えながら、その特徴を詳しく見ていこう。
LG 40U990A-W 基本仕様
| 項目 | 内容 |
| 画面サイズ | 39.7インチ |
| パネル | 21:9曲面型(2500R)、Nano IPS Black |
| 解像度 | 5K2K(5120×2160) |
| リフレッシュレート | 120Hz |
| 色域 | DCI-P3 99%(標準値) |
| HDR規格 | VESA DisplayHDR 600 |
| 映像入力 | Thunderbolt 5 ×2、DisplayPort ×1、HDMI ×2 |
| USBポート | USB-C ×5、USB-A ×2 |
| LAN端子 | 1000BASE-T |
| 機能 | デイジーチェーン、KVMスイッチ、PBP(ピクチャーバイピクチャー)、PIP(ピクチャーインピクチャー) |
| ゲーミング機能 | AMD FreeSync Premium |
| オーディオ | Rich Bass採用 10W+10W ステレオスピーカー |
| スタンド調整 | 高さ調整、チルト、スイベル対応 |
曲面型ディスプレイ
曲面型ディスプレイで、画面端の内容も通常より近く見えるが、2500Rのカーブは決して極端ではなく緩やかなカーブだ。計算的には2500Rの円の20°ほどの要素にあたる。緩やかなカーブは、臨場感を追求するゲーミングと違い作業用と考えると、圧迫感がなくちょうどよい。長時間作業でも疲れにくい印象を受けた。


映像入力
映像入力はHDMI×2、DisplayPort×1、Thunderbolt 5(入力/出力)を備えている。Thunderbolt 5は映像・音声だけでなくデータ転送や最大96W給電にも対応しており、ケーブル1本で複数の役割を担えるのが便利だった。さらに出力ポートを使えばデイジーチェーンで同機をつなぎ、5K2K@120Hzのまま拡張表示が可能だ。実際にiPad A16を接続した際も問題なく表示でき、ハブ経由の周辺機器もそのまま利用できた。
USBハブ機能
40U990A-Wには多彩なUSBハブ機能が装備されている。アップストリーム(USB Type-C:データ転送専用)に加え、ダウンストリームとしてUSB-C×4(10Gbps対応)とUSB-A×2を搭載。さらにGigabit対応LAN端子や4極ヘッドホン端子も備えている。接続元はUSB-CはもちろんThunderbolt 5からも選択でき、外付けSSDやペンタブ、オーディオインターフェースなど制作に欠かせない機器をまとめて扱うことができた。
KVM機能
本機はKVMスイッチに対応し、HDMI/DisplayPort/Thunderbolt 5の各映像入力とUSBハブをペアリング可能。表示している入力に連動して、キーボードやマウスなどのUSB機器に加え、有線LANやマイク付きヘッドホンも切り替わるため、2台のPCを行き来するワークフローでも配線変更なくシームレスに作業できる。
映像制作における利点
ワイドスクリーン表示とデュアルディスプレイとの差
MacとWindowsそれぞれに違いはあるが、共通する点として次が挙げられる。
- モニターごとに違いが出る。同じモデルでも個体差は避けられないため、片方をツール専用に割り切る人も多い。
- 物理的に分断されるため、解像度が高くても分割の境目なしに確認できない。出力が2系統必要になるのも負担だ。
このような問題から解放されるのが5K2Kのワイドモニターだ。アスペクト比と解像度の両立が大切で、40U990A-Wはその点に優れている。
21:9の価値
長いタイムライン表示はメリットではあるが、実際にはツールパレットの配置自由度に大きな価値がある。筆者はPremiere Proで古典的な「2up」スタイルを好むが、この場合でも効率よく表示でき、カラーマネジメント系の設定にもアクセスしやすい。
広色域・正確な表示性能
測定結果
曲面ワイドスクリーンに目が行きがちだが、本製品は表示性能も高い。Datacolor Spyder Proを用いて測定した結果、DCI-P3 99%相当の色域を実現していた。EOTFはガンマ2.6、色温度は6300K付近で、シアター仕様に近い。Spyder Proは今春に精度が上がった新モデルで、別途Spyder X2も用意して比較検証した。
LG Calibration Studio
LG 40U990A-Wはハードウェアキャリブレーションに対応しており、LGが無償提供する専用ソフト「LG Calibration Studio」と対応キャリブレーターを組み合わせて利用できる。Spyderなどで動作が確認されており、キャリブレーション結果に応じたICCプロファイルも生成されるため、OSやアプリケーション側で一貫したカラーマネジメント環境を構築できる。さらに、カラースペースや色温度、輝度、ガンマをターゲットに合わせて保存でき、用途に応じて最適な環境を整えられる。
一方で、本機は出荷時点から高い精度で調整されており、そのままでも十分信頼できる表示が得られる。必要に応じてハードウェアキャリブレーションを追加できる点は、より厳密な色管理を求めるユーザーにとって安心材料となるだろう。
HDR表示の必要性
HDR表示はSDR制作には関係ないと思われがちだが、それは誤解だ。現代の映像制作ではログ形式の映像を扱うことが多く、SDR以上の情報が収められている。そのため正しいカラーマネジメントにはHDR表示が不可欠だ。DaVinci ResolveやPremiere Proなど主要な編集ソフトがHDRを標準的にサポートするようになった背景にも、この必然性がある。
VESA DisplayHDR 600
40U990A-WはVESA認証のDisplayHDR 600に対応している。ピーク輝度600cd/m2以上と広色域が求められる規格で、ログ映像の本来の表現が確認できる。SDR制作にもリッチな映像を取り込むことができた。
トーンマップ表示機能とネイティブ表示機能
HDR表示ではソフトによって挙動が異なる。Premiere Proはトーンマップ機能でハードウェア性能を補い、ハイライト情報を圧縮して表示する。ただし過度な効果適用では本来と異なる結果になる。一方、DaVinci Resolveはネイティブ表示を採用し、600nits以上は表示しない。その分正確だ。40U990A-Wは600nitsを上限とするため、この挙動に沿った"正直な表示"が可能だ。
Thunderbolt 5対応がもたらす制作メリット
デイジーチェーンで広がる5K+5K環境
Thunderbolt 5は双方向80Gbpsに対応し、大容量データを扱うクリエイターにとって大きな武器となる。40U990A-Wにはデイジーチェーン出力があり、もう一台を接続することで5K+5Kのデュアル環境を構築可能だ。環境によってはGPU性能などの要件を満たす必要があるが、M4 MAX MacBook Proを用いた今回の検証では問題なく動作した。さらにOWC Envoy Ultraを直結した場合と、40U990A-W経由でハブを通した場合の両方を比較した。
ハブで拡張する接続の自由度
Thunderbolt 5ハブを利用することで、限られたポートを効率的に拡張できる。外付けSSDやオーディオインターフェースなど複数の機器を同時に接続可能となり、直結と比べて若干のパフォーマンス低下はあるものの、高速性は十分で実用的だった。ディスプレイ信号もハブ経由で扱えるため、機器構成の自由度が高まる点も大きなメリットだ。
まとめ
40U990A-Wは、現代の映像制作に必要な要素がそろったモニターだ。高解像度と21:9比率は作業効率を高め、広色域とHDR表示は高品質な制作に役立つ。KVM機能やThunderbolt 5対応による拡張性も魅力的で、ワークステーションの効率化に貢献するだろう。